くるぶし

リップヴァンウィンクルの花嫁のくるぶしのレビュー・感想・評価

4.4
「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」では小学生、「リリイ・シュシュのすべて」では中学生、「花とアリス」は高校生、「四月物語」で大学生、と女の子の成長過程を綴ってきた岩井監督が、3.11を経て送りだした“花嫁”の物語。

池袋の雑踏の中、SNSで知り合った男との待ち合わせ場所にやってきた七海。電話で「手をふってみて」と言われて、ためらいながらもゆらゆらと手を降る。その姿を、隠しカメラがこっそり映し出す…。この作品の導入部を見て、すでに心がざわついてしょうがなかった。おそろしい映画じゃないかって震えそうだった。
故篠田昇カメラマンが亡くなったとき、「もうあの奇跡のような映像は見られないんだな」って心の奥底にズドンと何かが落ちた一方で、余計なお世話だろうけれど「岩井さん、これからどうするのかなー」って同時に思っていたから、安心させてくれるには十分すぎるほどの冒頭シーンだった。

言いたいことは山ほどあるけどまとめられないので気づいたことをつらつらと。
・紀里谷監督登場シーン、吹き出したなぁ。他にもあんな人やこんな人がカメオ出演。
・Coccoちゃんが演技をしている。少しだけど歌もうたう。踊る。あの筋肉質なバレリーナの肢体から発する真白の言葉はすべて愛しかった。彼女の表現者としての底の深さははかりしれないものを感じます。
・よく「脱げばいいってもんじゃない」って、女優に発せられる言葉あるけど、本作の場合はどうなのさ。でもあのシーンは今後語り継がれていいぐらいの名シーン。
・「四月物語」の卯月が、ささやかでも自分の好きなものに囲まれた新生活をはじめるのに対し、七海は、、、。現実とはなんて厳しいものなのだろう。でも、画面の外で見ている自分は、無意識に七海のしあわせな未来を願ってしまう。

岩井さんの作品は、やっぱり自分には特別すぎるんだよな。
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