Omizu

アラビアン・ナイト 第2部 孤独な人々のOmizuのレビュー・感想・評価

4.1
【第68回カンヌ映画祭 監督週間出品】
第一部に続く第二部、第三話に登場するミニチュア・プードルのディクシーがパルム・ドッグを受賞した。

第一部の分かりやすい風刺と寓話から少し趣を変えてきている。特に第三話「ディクシーの所有者」はその中でも数話に分かれているという構造になっている。

第一話「腸なしシモンの逃亡の日記」は第一部に引き続きというテイスト。悪人を英雄視するのってあるあるだよね。ボニーとクライドみたいなことでしょ。貧しく希望のない庶民にとって、役人を出し抜いて好き勝手な生活をする犯罪者、アウトサイダーってある意味理想なんよね。

第二話「裁判官の涙」は構造が皮肉がよく効いてておもしろい。今回一番好き。愚かな行動の負の連鎖に呆れる裁判官、しかし彼女が娘にしたアドバイスこそ最も愚かなものじゃないかという。裁かれる人々の服装やマスクがいちいち笑いを誘う。最後、黒人のメイドさんが裸エプロンでケーキを焼くという引き際も抜群。

第三話「ディクシーの所有者」はなんか救いのない話というか、ディクシーの可愛さで持っている感じはあった。貧困層の現実を寓話という形で表現している。ディクシーの亡霊みたいなものが現われるところ、深読みを誘われる。『希望のあかり』のような、静かで落ち着いた狂気のようなものがあった。

ファンタジーと現代ポルトガル社会を重ねるバランスがやはり絶妙。非常に奇抜でありながら素直におもしろい。第三部も楽しみ。
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