Omizu

アラビアン・ナイト 第3部 魅了された人々のOmizuのレビュー・感想・評価

4.5
【第68回カンヌ映画祭 監督週間出品】
ミゲル・ゴメスのアラビアンナイト完結篇。今まで背景でしかなかったシェヘラザードの物語から始まる。その後も一部、二部とは違った構成になっている。

シェヘラザードが「もうムリ!」となるところから始まる。職人や盗賊と交流するシェヘラザードが美しい。夕暮れ時、駐車場をかごに乗ったシェヘラザードが横切るシーンが好き。虚構と現実の塩梅が見事。

鳥飼いの物語が次に語られ、途中中国人の移民の話が唐突にくる。鳥飼いっていうのは本当にある文化なの?調べたけどよく分からなかった。あってもおかしくないとは思うけど。

これまでよりはインパクトがないとは思うけど、シュールなユーモアと静かな語り口が心地よい。ポルトガルのさんさんと降り注ぐ日差しもいい。

全体としてはアラビアンナイトという枠組みにポルトガルの現代を描くという構造がすごく新鮮で面白かった。人って昔からそんなに変わっていないはずで、そんな人間の愚かさもまた変わらないはず。そこを上手く生かした脚本が楽しい。

ファンタジックでありながら現実に即した絶妙な美術や衣装も素晴らしかった。一部は現代で一部は時代ものという衣装は普通ならバカっぽくみえてしまうが、この作品の構造上別に不自然ではない。

話としては豚が話すやつと裁判官の涙が面白かった。ミゲル・ゴメスって面白い人だなぁ。これからはちゃんと追いかけよう。
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