茜

アメリカン・ゴシックの茜のレビュー・感想・評価

アメリカン・ゴシック(1986年製作の映画)
3.9
これ面白い!
視覚的に過激な表現がなくても、そこに狂気があれば充分恐ろしいものになるという事を証明する怪作でした。

主人公は、自らの子供を事故死させて精神を病んでしまった女性シンシアさん。
夫と友人グループで気晴らしにセスナで旅行に出かけたらば、エンジントラブルで不時着。
助けを求めに近くの孤島に向かうと、そこに住んでいたのは時代錯誤な生活を送る不気味な一家。
厳格な老夫婦も奇妙ですが、何といってもインパクト大なのがフリフリのお洋服とリボンを纏った心は少女のおばさん。キャラが強すぎる!

本作はただのキワモノ映画に終わらず、鑑賞後は何だか複雑な気持ちになるお話でした。
後味が悪いとも重苦しいとも違う、妙にモヤモヤした気持ち。
1920年代で時が止まってしまったかのような、自ら文明と切り離された生活を送る奇妙な一家と、1年前に自らの不注意で子供を死なせてしまったショックからずっと立ち直れないシンシア。
どちらも過去に囚われているという共通項がありつつ、終盤でその両者がぶつかりあって生まれる「狂気の連鎖」が最高でした。
途中まではちょっとテンポがダラダラしてるし、映像も地味めだから怠いかもしれないけど、投げずに是非最後まで観て欲しい!

不気味な一家は確かにおかしいし、フリフリ服のおばさんもどぎついんだけど、この一家が電気もない孤島で営んできた生活を思うと何かしんみりしちゃうんだよなぁ。
そしてその更に上を行く狂気がこの島にまた息づいていく訳で、エンディング後の未来を想像すると恐ろしいと共にやっぱり何か切なくなる。
全く堅苦しくも重苦しくもない映画なんだけど、不思議と色々考えさせられてしまう独特の空気感があるお話だった。
茜