デニロ

アリバイのデニロのレビュー・感想・評価

アリバイ(1963年製作の映画)
4.0
1963年製作公開。脚本熊井啓。監督牛原陽一。

脚本熊井啓に惹かれて出かける。幾度か観る機会があったのだが時間調整がままならず、今回は満を持して出向く。

空き地の目立つ東京郊外の風景が必要だったのでしょう。大昔に読んだ熊井啓の文章には、黒澤明にどれほど影響を受けたか、ということが記されていた。とりわけ『野良犬』への畏敬の念を強く感じたものでした。野良犬同士の争闘の果ての静寂の最中こどもたちの歌う“ちょうちょう”がのどかに聞こえてくる。熊井啓も似たシチュエーションで“気のいいあひる”を使っていた。どの作品だったか。

本作の雰囲気もそんな影響をかなり受けている。ひとつの殺人事件から物語をぐいぐいと間断なく転がしていく。事件の合同会議で本庁の二谷英明、所轄の宮口精二がコンビを組むことになるのだが、宮口精二がよろしくと簡単に挨拶すると、二谷英明もこちらこそ、と返します。今どきの、所轄は邪魔だ云々の不快なシーンはない。警視庁全面協力だからでしょうか。押し売りでゴムひもを売りつけながらの偵察とか、保健所所員に化けてでたらめを言ってだますとか、刑事がそんなことしてもいいのかと思いもするのですけれど。貧弱な猿轡を噛まされている娘さんが哀れです。

中国人グループが登場するのは日活の企業文化とでもいうのでしょうか。

さて、シネマヴェーラ渋谷 役を生きる 女優・渡辺美佐子、にて鑑賞したのですが、渡辺美佐子は着物にサングラスという風体以外の見せ場はありません。

あ、ラスト桜田門から見た有楽町方面の風景に『マタンゴ』のネオンサインが写るのです。
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