こたつムービー

アリバイのこたつムービーのレビュー・感想・評価

アリバイ(1963年製作の映画)
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見応え充分。刮目鑑賞。しかも二回。
烏山ー立川ー福生ー渋谷ー新宿ー浅草・・・
サスペンスフルな東京ロケが気持ちいい。

「天国と地獄」のエピゴーネンとする向きもあるが実際は同年で数ヶ月のズレであり、直接的とは言い難いね(むろん尋問で山崎努vs 小高雄二な犯人サブリミナルはあるにせよだ)。

それよりも「野良犬」や松本清張「張り込み」、東映警視庁物語の影響を図るべきで、もっと言えば50年代フランス映画のリアリズム表現の影響であり、要するにこの頃「リアリスモ」ががっちりキタってことよ。それで充分だし、


「もっと全然頂戴。たんねーよ」


って感じ。この頃キチっとハードにリアリズムやってんのになー、と後世の文化の断絶を想う。

で、この映画、二回観た。立て続けに。
もう一度おさらいしたくなる魅力に満ちてるんだよ、この映画。

まずは事件の「骨」の理解な。
これ「手形パクリ」や「手形詐欺」の手法理解してないと途中置いてかれるぜ?
作中、下里というチンピラ崩れにそのカラクリ言わせてるんだがセリフのみだから入ってこないんだよな。二回観てようやく(サスペンス根幹の)ウラ筋がわかった。そうして二回観た結果、


あ。この映画、破綻してない


と感じた。実によく出来てる。セリフにまとめ過ぎで普通に通り過ぎるが、ちゃんと置かれてんだわ。ものすごく左脳的だが素晴らしい脚本。熊井啓、当時33歳か。素晴らしいリアリズム。ブラボー。

アスパラ・アンプルとは当時のドリンク剤。
郷エイ治の悪役っぷりも素晴らしく、相変わらず大滝秀治は極上で、ラストカットの丸の内には「マタンゴ」の電飾が映る。
今となっては完全なる時代劇であり桃源郷だ。