カプチンバード

劔岳 点の記のカプチンバードのレビュー・感想・評価

劔岳 点の記(2008年製作の映画)
3.8
明治時代の登山は想像を絶する。

GPSどころか地図がない。生活の知恵を総動員し、勘や経験則を元に生きるか死ぬかの判断を一つ一つ行っていくのは、今の我々からは考えられない。雷鳥のいた場所を見て行動範囲からいく方向を決めるなんて、今の登山ではしないだろう。

近代的な装備がないということは必然的に重く嵩張る荷物になる。そのための筋力や身のこなしが必要になる。それでもできるだけ軽くするために現地調達も必要になる。…本当の山のプロでないと足を踏み入れることすらできない。
まして今回の1番の目的は三角点を設けること。そのためには櫓を建てないといけない。違う山からスコープを除き角度や距離を計算して、高さを割り出す。そのための荷物も人手もかけないといけない。つまり普通の登山ではないんだ。

正確な地図を持っていることは、その国の管理やシステムの正確さ、規律を示すことでもある。この明治時代に行った測量はかなり正確で現代の技術で測っても数十センチしか誤差がなかったらしい。

ネタバレだが登頂はこの時が初ではなかった。山頂に着くとそこには修験者の金属性の杖の先が残っており、研究によると平安時代のものであることが分かった。
人間て「やめときな」って言われても、行く時は行くし、「見たいものは見たい!」のは今も昔も変わってないんだな…と思った。

映画として派手さはないけど、驚きや実直な行為そのものを見られる。
伊能忠敬も間宮林蔵はもっとヤバい奴らで、テクノロジーを補って余りある人間の欲と身体はどんなだっただろうと想像を巡らせる一端には良い時間だった。

香川照之さんがウキウキしながら手足を器用に使ってタビを編んでるシーンが好きですね
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