シネマスナイパーF

ジュラシック・ワールド 炎の王国のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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神の真似事を繰り返してきた人間達による箱舟は、果たして偽りか?それとも?
人類という地球上の王が作り上げた王国は、ついに陥落する

前作には、内容そのものに対して文句はなく、充分すぎるぐらい楽しませてもらったのですが、今やる意味というものをあまり感じられず、とりあえず今の技術でシリーズ再開した以上のものは感じられませんでした、が、今作は、まさしく21世紀の恐竜映画として胸を張れる作品でした

なんか後半既視感あるなと思ったら、エイリアンだった
しかも、見せ方はエイリアンなのに場所は御屋敷だから、SFホラーながら旧モンスター映画の風格もある
それをジュラシックシリーズで実行するっていう


狂言回しを登場させたことで、完全に寓話的になりましたね
しかも誰がその役目を担ってるかって、ジェフ・ゴールドブラム演じる、あのマルコム博士!これは嬉しすぎる
彼は、自分達の生み出してきたモノを抑えきれずにいる人類に警鐘を鳴らします
劇中、ミルズが戦争云々言ってましたが、結局人間は止められないもので、何かが解決すれば必ず何かを新たに起こしてしまう
繰り返し繰り返し恐竜で一儲けを図る人類が、再び滅ぶ運命に直面した恐竜に手を差し伸べたが?
箱舟と言うには、あまりにも外道な方法を選んだ人類は、やはり神には成れない
またしても責任逃れをした人類に残された道は、自らの過ち〈幽閉されたクローン〉によって、自らの過ちを身をもって体感させられなければならないということだった…「私と同じよ」

豪邸の屋根の上で、月明かりを背に咆哮する勝利の雄叫びには、まあ雄かは分かりませんが、ひたすら震え上がるしかなかった
ジュラシックシリーズが、僕たちの想像を超えて、この題材を落とし込むことに最適でした
今の所はフィクションの存在であるエイリアンや、架空のモンスターじゃ成り立たない、かつて本当に地球上を支配していた者達を相手にしているからこそ説得力が強くなる題材だと思うので、展開そのものが恐竜である必然性が無くても、ジュラシックシリーズで繰り広げられる展開として非常に意義がある
むしろ、1作目から、神の真似事をしているにすぎないと言われてきたので、やっと納得のいく落とし前をつけたなと、頷きましたよ


テーマ性がシリーズの一本として素晴らしすぎるのですが、先述した、屋敷へ舞台が移ってからの展開が、シリーズらしからぬ雰囲気に溢れていて凄く良い
その気になれば恐竜にとって、すぐに取って代われる相手である人間の象徴として、ああいった屋敷を舞台にしたことは非常に効いていて、特に博物館的な個人ギャラリーは、人間の驕りを表現する場として、これ以上ない場所
あの淀んだ薄暗さの醸し出す、ゴシックホラー的ある種のスタンダードさは、この寓話的アプローチの作品において、昔話感や古のホラー映画感を醸し出していて、プロダクションデザインと撮影が本当に良い仕事をしたと思います
そもそも、ゴシックホラーで映画デビューしている監督が、その作品の撮影の方を起用しているため、資質全開であったと言っても過言では無い

ラスト、マルコム博士の言葉で締めくくられますが、正直バッドエンドと言ってしまって良いと思うんですよ
でも、あるキャラクターの行動により引き起こされるものであって、嫌な後味は残らず
欲を言えば、もう少し、そのキャラクターについての話があれば…とは思いましたが、それは無いものねだり?終わってみれば、やっぱりドラマは薄いな、というのは正直あるよな!若い衆二人は特に、なんとなく登場して大した成長もせず物語を終えていくので、特性活かす展開こそあれ、なんだか中途半端
もうオーウェンは西部劇で言うジョン・ウェイン的ポジションで良いと思うので、周りの人物、もうちょっと頑張ってくれや


クリス・プラット強すぎ問題言われてますが、元は軍人と前作で言われてましたし、新種の印象弱すぎ問題も、今までのインフレさせておけば良い安易なシリーズの積み重ね方とは微妙に一線を画していて良いと思います
ジュラシックシリーズにおけるダークナイトは言い過ぎ?そう言っても良いぐらい僕にはツボな作品でした
何より僕が一番感動した部分は、こんなトーンの続編ながら、オーウェンとクレアが初めて恐竜を見た時の話をする際に、さりげなくジュラシック・パークのテーマが静かに流れ出すという粋なメタフィクション的オマージュをしていた場面で、ここだけで満点つけて良い

また今年ベストが更新されてしまった