グラッデン

映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生のグラッデンのレビュー・感想・評価

3.9
劇場版『ドラえもん』を映画館で見たのは、5年前の震災直後に見に行った『新鉄人兵団』以来。丁度、旧作『日本誕生』あたりからがリアルタイムで映画館に足を運んでいた時期でもありますので、個人的にも思い入れも非常に高いゾーンです。

本作について、原作は未読なのですが、旧劇場版はなかなかの回数を見ておりましたので、おそらく(子供連れを含む親を含む)大半の大人鑑賞者と同様に「比較」という視点から映画を見ることになりました。ということで、そうした比較の中で感じたことは以下の3点です。

まず、映像作品としての良さを伸ばす意味でも、活劇の描写を厚めにした構成は良かったです。特に、本作のマスコットキャラの位置づけとも言える、ペガ・グリ・ドラゴの3体の躍動感のある描写は、テンションが上がりました。実写で言えば、カメラワークと表現すべきかもしれませんが、様々な角度からキャラが映りこんでくる描写と相まって随所にダイナミックな動きが物語を盛り上げてくれたと思います。

次に、物語の仕込みとして、序盤に置いた複線をしっかりと後半に生かすという構成は、上記の活劇増量にも非常に重要な役割を果たしておりました。物語を動かす歯車として、しっかりと噛み合っていたと思います。また、旧作との比較で補強を加えていたエピソードも的確だったと思いますし、補強ポイントがラストに至るまでの説得力を生むものだったと思います。脚本を務めた八鍬監督の思惑はしっかり伝わりました。

一方、本作に限った話ではないという前提で語らせてもらえば、絵的な部分に迫力を欠いた印象もありました。旧作『日本誕生』前後の大長編では、トラウマとまでは言いませんが、子供心にゾッとする絵が出てきました思い出があります。例えば『パラレル西遊記』に出てきた改変後の現代世界に登場した妖魔のビルディング、『ブリキの迷宮』に出てきたラビリンスの入口とか、絵画調の重みのある質感がもたらす1枚絵に妙な怖さを感じたものです。そうした映像における圧力がもう少し欲しかったかなとおっさんの贅沢な悩み。

あと、個人的には物語を見終えて、子供たちにどう伝わったかというのは気になりました。最後まで説得力のある良い内容だったと思いますが、鑑賞後に何が残ったのかと考えると、ちょっと自分でもパッと思いつかない印象ではありました(自分の物語消化が下手だったとも思いますが)。

色々書きましたが、こうして積み重ねたシリーズを、改めて伝えることができるのは素晴らしいことだと思います。こうした継続性は大切にしていってほしいですね。