あなぐらむ

花芯の誘いのあなぐらむのレビュー・感想・評価

花芯の誘い(1971年製作の映画)
3.7
※シネロマン池袋さんで上映中です。※

開始間もないロマンポルノ故に、まだ一般作のような心理サスペンスの体をとっているが、序盤から小沼節全開の「耽美と猟奇の振り子」が揺れ、性的身体だけになってしまったヒロインのドラマが描かれる。
新スター、牧恵子は日本人形の様だ(主演はこれのみで、以降は脇に回る)。

小沼作品の特徴として、見る/見られる/見せる、という関係性があるのに気づく。男女の間には常に何かしらの障害があり、或いは現れ、表面ではない内面、本質を見る為の手続きとして「見る」行為が存在する。
それは一般作「NAGISA なぎさ」にまで通じる目線の関係性だ。
時代からかベトナム戦米兵が絡む辺りは日活ニューアクションにも通じるが、またしてもヒロインが去る姿で物語は終わる。男は取り残される。

音について。無音のシーンがある。アフレコである事を生かしたシーンだが、これらはガラス越しに男女の行為を盗み見る(主に車窓)で使われる。音が遮られ、観客の目は画に集中する。他人の行為を盗み見る視線。それはそのまま観客の視線となる。
またアングルとしては俯瞰が多用されている。俯瞰とは即ち神の目線、映画の視線である。俯瞰の構図の中でくんずほぐれつ、まるで蛇がのたうつ(しかも刺青がそれを浮かび上がらせる)様な男女の営みが続き、画面を覆い尽くす。
ただ性交が撮られているのではない。禍々しい何かが見える。