ぽち

ゼロの焦点のぽちのレビュー・感想・評価

ゼロの焦点(2009年製作の映画)
3.0
原作の良さに助けられていて、映画の質としては普通。

さすがに松本清張の代表作というだけあり、描かれる人間の内面が見事で、脳内で小説を読むように観るとかなり満足度が上がる。

映画としてはなぜか小説にある「重さ」が無く、まるで6回も作られたTVドラマのようなのが最大のマイナス。

これは役者陣のオーバーアクトと、いかにもな演出のせいだろう。

戦後から昭和初めのころの街並みなどロケと思われるシーンは驚くほどよく再現されていて、これは見所ではあるのだが、一旦セットに入ってしまうとそれとは対照的にチープになって、一気に軽さが出てきてしまう。

原作にかなり忠実なのはリスペクトとしてアリなのだが、松本清張が描いていた「戦後の日本」からのテーマはほとんど無視されている。

制作年代を考えるとアレンジを加え、もっと主役の「お嬢様探偵」ぶりを前面に出しても良かったと思う。

結果として、ちょっと豪華なTVドラマ程度になってしまった作品。
原作を脳内再生させて観ることをお勧めする。



余談。
犬童監督はFUNKY MONKEY BABYSやエレファントカシマシのミュージックビデオを手掛けているのだが、今作での音楽のセンスの無さってどうなの?

劇中の「Only You」は全く映画を盛り上げていないし、逆に邪魔になるぐらい。
で、エンドロールの中島みゆきの浮きかたはすごい。あまりに異質で全く作品と合っていないのは、監督の趣味ではなく、もしかしたら大人の事情なのだろうか?笑

とにかく、これなら全編楽曲なしの方がまだ良かったかな。
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