原作の良さに助けられていて、映画の質としては普通。
さすがに松本清張の代表作というだけあり、描かれる人間の内面が見事で、脳内で小説を読むように観るとかなり満足度が上がる。
映画としてはなぜか小説にある「重さ」が無く、まるで6回も作られたTVドラマのようなのが最大のマイナス。
これは役者陣のオーバーアクトと、いかにもな演出のせいだろう。
戦後から昭和初めのころの街並みなどロケと思われるシーンは驚くほどよく再現されていて、これは見所ではあるのだが、一旦セットに入ってしまうとそれとは対照的にチープになって、一気に軽さが出てきてしまう。
原作にかなり忠実なのはリスペクトとしてアリなのだが、松本清張が描いていた「戦後の日本」からのテーマはほとんど無視されている。
制作年代を考えるとアレンジを加え、もっと主役の「お嬢様探偵」ぶりを前面に出しても良かったと思う。
結果として、ちょっと豪華なTVドラマ程度になってしまった作品。
原作を脳内再生させて観ることをお勧めする。
余談。
犬童監督はFUNKY MONKEY BABYSやエレファントカシマシのミュージックビデオを手掛けているのだが、今作での音楽のセンスの無さってどうなの?
劇中の「Only You」は全く映画を盛り上げていないし、逆に邪魔になるぐらい。
で、エンドロールの中島みゆきの浮きかたはすごい。あまりに異質で全く作品と合っていないのは、監督の趣味ではなく、もしかしたら大人の事情なのだろうか?笑
とにかく、これなら全編楽曲なしの方がまだ良かったかな。