回想シーンでご飯3杯いける

ラーメンより大切なもの~東池袋大勝軒50年の秘密~の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.5
暖簾分けした弟子が出した店は僕が住む大阪にもあって、何度か足を運んでいるものの、山岸一雄さんが立たれている本家の東池袋大勝軒には一度も行った事が無く、このドキュメンタリーを見て、その魅力を余すところ無く知る事ができた。

とは言っても、実際のところ本作ではラーメンの味に対するうんちくや経営のノウハウには殆ど触れられていない。今ではラーメンもグルメの一端を担うメニューであり、青年実業家が多数参入し競争を繰り広げているが、山岸さんが大勝軒を始めたのは、それよりもかなり前。本作で映し出されるのは山岸さんのポリシー「旨いものを腹いっぱい食べてもらう」そのままに、満足げな笑みを浮かべながらラーメンをすするお客さんの姿だ。ラーメンそのものの映像ではなく、僕はお客さん達の姿を見て、無性にラーメンを食べたくなってしまった。

山岸さんは、奇しくも本作が完成した2年後に他界した。その事実も相まって、画面内の姿や言葉によりいっそうの深みが生まれている。彼のラーメン人生をそのまま形にしたような、味わい深い作品になっている。