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恋妻家宮本のkuuのレビュー・感想・評価

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
4.0
『恋妻家宮本』
映倫区分G.
製作年2017年。上映時間117分。

人気ドラマを多数手がけてきた脚本家・遊川和彦の映画監督デビュー作(今やと松潤の『となりのチカラ』かな)。
重松清の小説『ファミレス』を遊川自ら大胆に脚色し、熟年離婚が当たり前になった現代で、子どもが独り立ちした後の夫婦がどのように向き合っていくのかを、コミカルかつハートフルに描いたって、ホンマ重松清の泣き笑い節を崩さす描けてましたし、阿部ちゃんはホンマ笑わしてくれる。

中学校教師で優柔不断な夫・陽平を阿部寛(大学時代:工藤阿須加)、専業主婦として家庭を切り盛りしてきた、しっかり者の妻・美代子を天海祐希が演じ、共演に菅野美穂、相武紗季、富司純子ほか。

ひとり息子の正が結婚して一人立ちしたことで、2人きりになった陽平と美代子の宮本夫婦。
2人は大学時代に大学生時代に出来ちゃった婚で結婚したため、50歳にして初めて夫婦ふたりきりでの生活を送ることになる。
そんなある日、陽平は美代子が隠し持っていた離婚届を見つけてしまい。。。

感想の前に宮本の云ったセリフが忘れられないので、現在のロシアに贈りたい(小生にも云い聴かさなきゃ)。

正しいことも大事ですが、優しさが必要な時もある。
戦争みたいに、正しさと正しさはぶつかるけど。
優しさと優しさは、ぶつからない。
今、本当に必要なことは正しさではなくて、優しさなんじゃないですか。

扨、人はコミュニケーションは重要やと誰もが知ってる。
しかし、悲しいかな、それはいつも簡単に出来ることやない。
自分を表現することにいつも苦労していたり、軽い会話や自分の役割にとどまることに満足していたり、知る前に推測したり決めつけたりする(小生の陥りがちな傾向)習慣に陥っていたりする。
どないすりゃ、大切な人と良好なコミュニケーションをとることが出来るんやろかと。
今作品では、ある夫婦がつながりを取り戻そうと決心している様子を描いています。
子どもからもらった
『お父さん』
『お母さん』って云う肩書きを捨て、再び『夫婦』になる。
今作品は
『夫妻』と云うよりも、
『夫婦』が良く似合う作品でした。
『夫婦』と『夫妻』とは同義語ながら、語感に微妙な差があり、互いに入れ替えて使えるとはかぎらない。
たとえば、語の後に、円満や喧嘩を付けると、夫婦円満や夫婦げんかは使えるが、夫妻円満や夫妻げんかはしっくりこない。
『夫婦』は話し言葉で、『夫妻』は書き言葉に得てして使われるが、余談になりますが、そうとも限らないときもあるのは記しておきます。
教育勅語に『夫婦相和し』とあるから、正式な文章語でもあるんやろな。民法に『夫婦は同居し』と規定されているから法律用語としても使用されている。
しかし、あらたまった用語としては夫婦より『夫妻』が使われる。
『社長夫婦に仲人を頼む』には違和感がある。
『夫婦』は、『私ども夫婦』のように自分側に使えるが、夫妻は『私ども夫妻』のように自分側には用いない。
夫婦は漢語で、大和言葉では『めおと』。
めおとは普通『夫婦』と表記するが、発音通り記すと妻夫かな。
封建社会の男尊女卑ではなく、現代風のレディーファーストとまではいかなくても対等なら。。。
書きようがないじゃないか。
まぁ、夫婦茶わんをはじめ、夫婦岩・夫婦仲など『めおと』と読むものの表記は妻夫ではなく夫婦ってかんじで、宮本さんちは。
横路それまくりやけど、
めおとがつながりを取り戻そうと決心している様子を描いています。
しかし、あることをきっかけに、二人の結婚生活やつながりのあり方に疑問を抱くようになる。
パートナーのやり方に慣れた後、相方はどのようにして努力を続けることができるんやろかと。
そんな中、宮本は生徒を助けることを通して、先生は自分の内側にある、自分が大切だと思うものを探し始めます。
夏目漱石の
人間が未来に向けて生きるのに必要な言葉
『考えろ、語れ、行え』
って黒板に書くシーンの宮本を思い出すなぁ。
それが結果的に、奥さんとの関係で行動を起こすきっかけになる。
同じように、すべてのコミュニケーションスタイルがすべての人にフィットするわけやない。
自分の能力を疑ってかかることも多い。 
せや、コミュニケーションが取れないからといって、悪い人、嫌われる人というわけでもない。
コミュニケーションスタイルを理解し、自分のスタイルを確立し、そのバランスを取るために、教師がどのようにナビゲートするかが、この旅のポイントなんやと作品を振り返り思います。
宮本にとっては、生徒の一人が時には先生の先生にもなり、この展開の鍵になるし、良い部分でもあった。
厳しいけど優しい女子生徒が、助けが必要だとわかる別の生徒に注意を払うよう、先生を励す。
特にこの文脈の中で、日本の素晴らしいメッセージ性を持っているんちゃうかと感じました。
感想の前に書いた、正しさより優しさ。
優しさを持って相手に接することで、いろいろなことが開けてくる。
美しいなぁ。
時にバカバカしく、ベタベタ~ベタなストーリーでもどこか親近感が湧く。
演出や第四の壁(俳優と観客を分けるように舞台と客席を隔てる架空の壁。 プロセニアム・アーチと呼ばれる観客席と舞台空間とを隔てる枠は物理的に開放されているものの、あたかもそこに壁があるかのように、役者たちは演技の最中、舞台空間の向こうに観客がいることを意識しないか意識していないように見せかける)の破壊とか、この奇抜さが面白味を増してました。
小生は、独身で宮本の真逆の性格ながら、妙に親近感を持ち今作品にドップリ嵌まりました。
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