かるまるこ

恋妻家宮本のかるまるこのレビュー・感想・評価

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
1.0
【料理教師宮本】

遊川和彦は現役のテレビ脚本家の中では1番と言っていいほど好きなのだが、これは、ホントにどうしちゃったのかと思うくらい、上手くない。

まずテーマがブレている。

タイトルやあらすじから、「離婚届を巡る夫婦の話」だと思ったら大間違いで、「料理教室に通う中学教師の主人公が、料理を通して生徒の問題を解決する」というまるで「グルメ漫画」みたいな展開に早々に脱線する。

原作未読なので、原作のせいか脚色の問題なのかは定かではないが、原作タイトルが『ファミレス』なので恐らく、「グルメもの」を意識して書かれた原作を、脚色段階で夫婦の離婚話に変えたんだと思う。

デニーズ内だけで夫婦の来歴を説明し終えてしまう導入は、脚本、製作費双方のコスト面で上手いやり方だと思うが、それ以降が非常に冗長で、一向に夫婦の離婚騒動にフォーカスしない。

初監督という遠慮と不安から、原作に大胆に手を入れることを躊躇ったせいかもしれない。

「主人公が妻に離婚届の件を打ち明けるシーン」が転調部分にあるが、明らかに引っ張り過ぎ。
もっと前倒ししてその後の展開を描いて欲しかった。

もっと言えば、教え子のドンとメイミーを主役にして、「本心を他人に見せない正論厨な主人公が、最後に本音をぶちまける」いつもの「遊川プロット」で、2人が宮本夫婦の離婚危機を救う展開にした方が良かったと思う。

あと気になったのがカメラポジション。

これは脚本家上がりの監督にありがちな症状なのだが、まるで演者全員を常にカメラで捉えてなければいけない決まりでもあるみたいに、執拗に繰り返される「誰かナメの誰か」のショット。

たぶん脚本家の性なんだと思う。

人物の出入りと、存在が忘れられずっと突っ立ってる人物がいないか。

執筆時、この2点はかなり気をつける部分だし、それが刷り込まれて強迫観念みたくなっちゃってるんだと思うけど、人物の位置関係は1回映せばわかる。
非常に説明的でクドいのでやめて欲しい。

追記:ドン役の役者さん、闇深そうな目をしていて、適役だったし、若いので今後がとても楽しみ。
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