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悪魔の館の南のレビュー・感想・評価

悪魔の館(1896年製作の映画)
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1895年12月28日。パリ、グラン・カフェ。

リュミエール兄弟による史上初の映画興行の場には33人の観客が集まったという。

その有料上映に先立つ特別試写会には、ジョルジュ・メリエスも招待されていた。

真新しい芸術を目の当たりにし、一瞬で心を奪われたメリエスはすぐさまカメラを自作し、映画づくりに着手する。

もともと劇場の興行主で自ら手品師や俳優としても活動していた彼は、舞台でのマジックをフィルムでも再現しようと、トリック撮影を活動初期から手掛け始めた。

先達のリュミエール達が手掛けた映像作品の多くは、日常の記録やヴォードヴィル劇場ふうのシンプルな見せ物だった。

それに対し、メリエスは活動開始からわずか数ヶ月〜1年そこらで撮影技術を次々と発明し始める。

新しい技術の可能性にいち早く気づき、大きく押し広げた慧眼と創造性に感服する。

今作は悪魔や幽霊などの登場キャラクターから、「史上初のホラー映画または吸血鬼映画」と言われることもあるが、実質は観客を撮影トリックで驚かせることが主軸の賑やかなコメディ。

人気の舞台女優でメリエスの2番目の妻となったジャンヌ・ダルシーは、その後もメリエスの多くの作品に出演した。

今作では大釜から出てきた女性を演じている。
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