馮美梅

ファニア歌いなさいの馮美梅のレビュー・感想・評価

ファニア歌いなさい(1980年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦時、アウシュビッツ収容所に輸送された、歌手ファニア・フェヌロン。自分が歌手だったこと、音楽学校でピアノの演奏や編曲なども勉強していたことで、収容所の楽団に配属される。

列車で知り合ったマリアンヌという女の子もお願いして楽団に入れてもらう。そこにはマーラーの姪のアルマ・ロゼが指揮者そしてリーダーとしているんだけれど、他の楽団員はというと経験はバラバラでなかなか大変。

楽団の仕事は新しく輸送されてきた人たちの出迎え、ガス室に送る時、そしてSSの人たちの為に演奏することが主なので、基本的に他の収容者達よりは待遇は良い。

でも、それがまたファニアにとっては自分よがりみたいで心苦しかったりする。特にSSの人たちに如何に飽きさせない演奏を聴かせるか。もし少しでも気に入ってもらえないと自分たちの命にかかわりますからね。

収容所に行った人にはそれぞれの物語がある。この物語もその一つ。
きっと、他の人たちからすると、羨ましがられたり、妬まれたりしただろう。演奏ができるというだけで、ガス室に送られる恐怖からは救われるわけだから。でも、ファニアはそうは思っていない。

映像はあえてかカラーでも、セピアに近い色合いで、劇中には時々、当時の映像などもインサートされていたりする。

アルマ・ロゼが遠征楽団のメンバーになったと喜んで、SSのところに食事に行ったけれど、あっけなく死んでしまう。でも、他の収容者とは違いかなりキチっと敬意を払った形で葬儀をされたみたい?

いよいよ、ロシア軍との戦いも激化して、ファニア達も移動を余儀なくされる。そこはベルゲン・ベルゼン収容所。ここはアンネの日記で有名なアンネ・フランク姉妹もいた場所で、チフスなど伝染病などが蔓延したひどい収容所だったけれど、なんとかファニアもギリギリのところでイギリス軍に助けられる。

自分たちが助けられる中で、捕まったSS達そしてカポたちが捕まりトラックに詰め込まれる中に、あのマリアンヌもいた。生きた行くために、彼女は彼女なりに色々頑張ったかもしれないけれど、あまりに考えた幼かったのが残念だと思った。

ファニアは編曲などのために紙や筆記用具などを使うことができたおかげで、収容中の出来事を日記として書き残していたことで、この作品や書籍として発表することができたようです。

先日観た、マウトハウゼンの写真家では写真のネガを守った人、そして、この作品では音楽隊から見た収容所を知ることができた。こういう作品は気持ちのいい物ではないけれど、歴史遺産として必要な作品だと思う。

ファニアの自分は何者でもない単に人間だ。性別とか、国籍とか、人種とか、宗教とか何も関係ないんだという言葉は重い。
馮美梅

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