イライライジャ

セイント・クララのイライライジャのレビュー・感想・評価

セイント・クララ(1996年製作の映画)
3.8
駄目だ良すぎて余韻に浸りながら泣いてしまった。
イスラエルのファンタジック青春映画。
ロシアから移民してきた予知能力を持つ少女クララと、その子に想いを寄せる不良少年。
日々政治的に厳しい状況下に置かれている少年少女の革命と恋。
恋に落ちそうになったときに未来を予知できる能力を持ち、恋を始めてしまったら能力は失う。このロマンチックな設定がたまらないのだが、まさかこの設定がラストを大いに最高に盛り上げようとは。

サイバーパンクな服装、イスラエルの少し荒れた風景、暗いが心地いい音楽、ディストピアな作風、その中で少年少女のピュアな恋が展開していくのが更に良い。
校長先生がクールなおっさんで、2人が歩いてる姿を校内から見つめ「愛は…決して止められない…」と呟いたり、2人と鉢合わせたときに「愛とは人生の光だ」などと助言(?)してくれる。かっこいい。

不良少年がお母さんに恋愛相談するシーンも良かった。「みんな俺に惚れてるけど彼女は俺のこと眼中にないんだ」と言いつつ映画に誘おうと決意。
映画に誘うことに成功するけど、クララはとんでもない予知をして終盤は終末映画のようになる。
でも2人は映画に行く。人々は避難して街に人はいないが、動物飼いは避難せず散歩している。
世界の終わりと共に、2人の恋の始まりでもある。恋を始めたということは能力の終わりということでもある。
このラストシーンだけで、初恋なのになによりも“愛”を選ぶ姿に胸がキュンキュンしてつらい。
私はこういった絶望的状況の中に2人の愛だけが生きていく希望のラストが大好きなんだよ。