ポンコツ娘萌え萌え同盟

吸血鬼のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

吸血鬼(1956年製作の映画)
3.6
本作はホラーの皮を被った変格ミステリだ。
血が抜かれた少女の死体と吸血鬼と呼ばれ世を騒がす怪事件、ホラーを描こうとする割に、怪事件の謎を追う新聞記者のピエールの姿を映しホラーよりも寧ろミステリー調のある脚本だと思った。

デュ・グラン屋敷の怪し気ながらも美しいゴシック的なデザインとオブジェクトが散りばめられた古城の登場に、本作の追跡とは水平面に行われる悪役のマッドサイエンス。ホラー好だけじゃなくミステリ好きにも美味しい設定をついてくるw
ここまで揃えば本格ミステリも描けそうだが、ただ本作のマッドサイエンスの理論は現実的ではない。だからこそ本作は変格ミステリなのだ。とはいえ、一娯楽作として楽しめた。

怪しさも雰囲気ある世界をカメラで映しているの魅力ながらも、やはりお気に入りは古城の撮影だ。
前述した通りゴシック的な怪しさも美しさも2つが入り交じたデュ・グラン屋敷のセットの放つ雰囲気、魅力を構図やカメラや照明から見事に映されてる。
ただ怪しい美、妖美を包含する本作の中に覆い隠す醜悪さ。映像下にてみるみる内に美が崩れ落ち醜悪な実体が暴かれる特殊技術のごく自然さに驚いた。
"化けの皮が剥がれる"という諺が最も相応しい作品。