ダネクン

Kingyoのダネクンのレビュー・感想・評価

Kingyo(2009年製作の映画)
4.5
「なんだか不思議な感じがします」

主人公で教師である中年男性が途中で言うセリフだが、この「不思議な感じ」を表現するのに注力した凄い映画。

ほぼ全編スプリットスクリーン(左右で画面が割れている状態)。
話はやや古めかしささえ覚える程上品な、かつて不倫関係にあった中年男性と若い女性についてで、この2人が秋葉原を散歩する(左の画面に男の、右の画面に女の視点が割り当てられている)

これだけ聞くと技巧的な映画であるように思えるが、ところがどっこいこれが非常に映画的な感動を呼び起こす。

冒頭出会うまでは二人の出会いを予感させてハラハラさせるし、二人が出会ってからは、並んで歩いていても別々の実景を写して二人の視点の違いを示したかと思えば、それぞれのカメラの構図を調整し、背の違いを取り払って、二人が平等な立場であることを表現したりする。一番強烈なのは2人が並んでいる引きの絵で、ほとんど1枚絵に見えるのに背景が一致しないから、もう完全に二人が隔絶してしまっていることさえ表したりする。

それに加えて、左で引き、右で寄りというベーシックなのもやれば、右と左で時間を変え、ある物を通じて出会ったこともないはずの2人を結びつける。

そして片方に何も映さないことで、とてつもなく不穏な空気を醸し出しさえする。

スプリットスクリーンで表現できることを片っ端からリストにして作っていったんだろうか、と言うぐらい濃度が濃い。映画が表現しうるセンス・オブ・ワンダーが詰め込まれている。

凄い。これが天才の所業か
勉強になります
ダネクン

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