カタパルトスープレックス

Kingyoのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

Kingyo(2009年製作の映画)
4.7
これはかなりすごい映画です。エドモンド・楊監督の短編作品。これを早稲田大学在学時に作ったんだから凄まじい才能です。

舞台は秋葉原。秋葉原メイドツアーのアルバイトをする女子大生(藤崎ルキノ)、そこで大学教授の元恋人(川口隆夫)と出会います。大学教授には妻(久藤今日子)がいました。この三人を結びつける「金魚」とそれぞれの関係性。

まず目につくのが独特の映画技法です。二画面分割で同時進行します。ミュージックビデオとかでは使われる機会が多かった実験的手法です。最近の例だとゲスの極み乙女の『猟奇的なキスを私にして』がそうですよね。複数画面の同時進行はテレビドラマ『24』が確立しましたよね。『24』では重要シーンの切り替わりの時だけ複数画面で同時進行するイベントが表示されました。この作品ではほぼ全編が二画面で進行します。

この二画面の使い方が上手い。単に気をてらった実験映像ではなく、意味がちゃんとあります。一画面では複数のカットで構成されるモンタージュでなければ表現できないことが、二画面だと二カットでできてしまいます。例えば結婚指輪をはめた手のクロースアップが肩に触れるカット、その手が肩に触れられた時の女性の表情です。この二画面でのモンタージュの工夫をいろんなところで効果的に使っています。新しい映画技法の発明ですよ、これは。

そして、「金魚」という一つのモチーフを使った三人の関係性の描き方も素晴らしいです。金魚の意味するところ、それを育てる意味を知ると恐ろしくもあります。

ボクはラストも好きでした。こういうドラマって落とし所が大事です。何か思わせぶりに終わらせることもできたでしょう。多くの監督はそうすると思います。観客に委ねてしまったほうが楽だからです。この作品のように観客に判断を委ねる余地を残しつつ、ストーリーとしてはきっちり終わらせる。これってなかなかできないことです。

いやー、この作品を観れてMUBIを契約して良かったと思いました!😍