じゅ

ランジュ氏の犯罪のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

U-NEXTさん曰くフィルムノワールらしい。確かに「殺人の容疑をかけられている男と謎の連れの女が片田舎の宿に駆け込んできた」っていう冒頭だけ見るとそうかもだけど、詳しい内容を見るとそんなことないような気もした。どうなんだろう。

印刷工場で働く傍ら小説を書く男性(ランジュ)が欲まみれの社長(バタラ)を殺害した後、ランジュに想いを寄せる女性(ヴァランティーヌ)と共に逃げてくる。逃げた先の宿で通報するか否かを話し合う客にヴァランティーヌが事情を説明する。その説明が本作の主な内容。
バタラは色欲と借金に塗れ、借金の返済のためランジュの小説を勝手に利用した末、それでも返済が間に合わずとうとう刑事の捜査の手が及ぶと汽車に乗って逃走する。汽車は事故に遭いバタラは死亡したと報じられていたが、実は(おそらく同乗していた神父となり替わって)生存していた。一方でバタラが不在の間、印刷工場は共同経営とランジュの小説「アリゾナ・ジム」の力で経営を立て直していた。そこへ帰ってきたバタラ。様々な人の手で立ち直った会社を再び乗っ取ろうとするバタラに業を煮やし、ランジュはバタラを銃殺する。そうして国外逃亡のため冒頭の宿に立ち寄ったとのこと。

とても人情味のある話だったなと思う。個性あふれる登場人物たちは皆一様に陽気で温かみがあった。
シャルルの部屋の窓を塞ぐ看板を外して暗い部屋に陽が差し込むカットや、バタラの子をはらまされたエステルをシャルルが受け入れるシーンなんかは印象的。アリゾナ・ジムの映画化を決めて前祝をする場面では、アパートの管理人の愛すべき酔っ払い姿が愛らしい。酔っぱらうといつでもクリスマス気分になっちまうらしい。
冒頭の宿に場面が戻ると、事情を聞いた客たち(宿主の息子だけ除く)が2人を逃がすことを決める。砂浜を歩くランジュらに手を振る2人の男の姿をちらっと映したカットにも人情味が溢れ出る。そんな話だったなと思う。


一方で、ほんの少し穿った見方をすると、「本当かな?」っていうのはある。宿の客に事情を説明した内容はヴァランティーヌ視点であるべきはずだが、彼女が知りえないような内容も多分に含まれている。
はたしてそれが脚本上仕方のないことだったのか、あるいはその点を含めてフィルムノワールとしての本作が完成するのか。
じゅ

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