ひげしゃちょー

日本で一番悪い奴らのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.9
『県警対組織暴力』を筆頭とする70年代東映実録ヤクザ映画のような勢いとパワーがあると同時に、スコセッシの『グッドフェローズ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のような趣もある。 柔道一筋で真面目だった諸星が村井という女好きの先輩に影響されて道を外すようになり、北海道警察のエースと呼ばれるまで昇りつめてから落ちぶれていく様子は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に近いか。 まさか今の時代にこんな日本映画が観れるとは思わなかった。漫画みたいな出来事だけどこれば実話ベースだっていうのがタチが悪い。ちょっと昔の話にしろ日本警察やばくないかい。 酒もたばこもやらないような諸星が拳銃を検挙するためにチンピラたちとグルになってシャブまで裁くようになり、挙げ句の果てには自らもシャブに溺れていくという救いようのない展開の中で、印象深かったのが潜入捜査でヤクザと取引する中で諸星の餃子耳を見て刑事だと思われて銃口を突きつけられた時の震えっぷり。 あれだけの悪徳刑事でも拳銃を向けられるとああなっちゃうんだなと思った。 あと、ガチガチに緊張した諸星が黒岩と初対面した時にかますハッタリをかます一連の流れも面白かった。 近年のメジャーな日本映画の中ではかなりラブシーンが多いと思うんだけど、一番印象的だったのが、自分でシャブはやらないと決めていたのに情婦の由貴がシャブ中になっていたのを知って平手打ちしながら由貴とセックスするシーン。 暗めのライティングを用いている上にカメラが引きで撮影しているので諸星や由貴の表情は定かでないものの、怒りや哀しみといった絶望に近い想いが画面からは滲み出ていて近年稀に見る哀しいラブシーンになっている。「ごめんね。でも、あんたのさばいたシャブだから。」に泣きそうになった。 後半がやや冗長になったものの初めてシャブを売った時の表情なんか間違いなく綾野剛のベストアクトだし、今年度No.1の映画ではないだろうか。