けーはち

日本で一番悪い奴らのけーはちのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
3.7
純朴な青年・諸星は柔道の腕を買われ北海道警察に。だが、公共を守る警察でも点数で“評価”される現実に悶々とした日々。諸星は先輩刑事に諭され、裏世界にS(スパイ)を作り、彼らの後楯となり、取り返しのつかない違法行為に手を染める。クソ真面目な公僕(社畜)が努力を重ねるほど堕ちて行く、事実に基づくピカレスク悲喜劇。

★所構わず煙るタバコ、体育会系パワハラやセクハラ、粗暴な警察、繁華街を我が物顔で闊歩する暴力団──さらに北海道特有の本土への対抗心、警察組織内の不毛な縄張り争いが織り交ぜられて「昭和」の猥雑さを引き立てる。それは何とも不快な情景なのだが、そこに放り込まれるガツガツしたエロスやVシネ感のある場面、堕ちていく警官はポップなテイストで軽快に分かり易く語られ、時に青春の残り香すら漂わせる叙情的な場面もありハッとする画面作りはまるで日活ヤクザ映画&ロマンポルノの匂いを現代に復活させ(ようとし)た、和製ノワールなのだと思う。

★舞台が70年代なのに「瞬殺」と口走ったり(90年代のK-1とか格闘技流行以降の語彙)「ソ連」と言わず「ロシア」と言ったり時代考証のヌルさは惜しいが、刑事モノにしちゃ警察内の専門用語、隠語も控え目、表題も『日本で一番悪い奴ら』と究極的分かりやすさ。時代劇みたいなもんで、雰囲気だけの“昭和劇”という手法なのかも知れない。かく言う私もそう昭和をリアルタイムで知らない。昭和は遠くなりにけり。

★『仮面ライダー555』初演時から陰気でヤバい奴を演じてきた綾野剛。彼からは陰のオーラが放たれており、悪役がよく似合う。柔道バカな青年が闇に堕ち、ガツガツSEX、シャブ決めイキ顔シーン、R15でギリギリのエグい熱演を披露。線が細いために柔道王者の警官という役柄に見合った恰幅はなく説得力不足は否めないか。