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日本で一番悪い奴らのTSのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.5
【手段を選ばぬ正義の成れの果て】95点
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監督:白石和彌
製作国:日本
ジャンル:犯罪
収録時間:135分
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傑作。今年公開の邦画は、個人的には良作が多いのですが、今作は今の所その最高峰かもしれません。135分といえど、まさに退屈知らずの映画でした。R15は暴力シーンという理由ではなくて明らかにあちらの方の理由で。映画館であれらを見せられるのは割と恥ずかしいのでR18でも良いような気がしたのは自分だけでしょうか(笑)

北海道警察に入隊した諸星は、日本一の刑事になるために、先輩警察のアドバイスを真に受けていく。柔道優勝という輝かしい成績を残す諸星は、その身体能力を使いどんどん悪徳業者を攻めていくのだが。

公務員の不祥事を描く映画なんてありふれていそうですが、改めて見てみると本当にひどい。国家の治安を維持する機関がこれではどうしようもない。そこには治安より自欲を優先する姿がドロドロと描かれています。そんな環境の中、若手の警察が先輩警察に唆されて変容していくのは実にみてられない。
僕は今作は最初から問題児の刑事が何かしでかしていく話なのかなと思っていたのですが、そうではありませんでした。純粋な正義感をもった警察が汚されていくという話でした。これは現代社会においても当てはまるでしょう。警察を扱っていますが、他の職種でもあり得る自体と言えましょう。

凄まじく高いスコアをつけさせていただいてますが、その最たる理由としては、綾野剛の迫真の演技が挙げられます。素晴らしいの一言に尽きる。これ程多彩な演技が出来るというのは才能ですね。特にヤ○ザ者に成り切ってしまってからの演技は文句無しでした。今作で綾野剛が好きになってしまったくらいですね。

正直、最初はコメディレベル。セックスにはげむヤ○ザ者の家に乗り込みボコボコにする行動力には笑わされてしまいました。ここまで躊躇せずにアクションを起こしてくれたら最早爽快と言わざるを得ないです。何も恐れずにツッコむそのバイタリティが、良くも悪くも諸星を変化させていくのでしょうね。
途中で出てくるパキスタン人も割と面白い。笑顔で盗難車というところは笑ってしまいました。ということで、今作は警察とヤ○ザが関わるということでシャブやチャカ、盗難車など危険用語が延々と連発されます。グロテスクな箇所はあまりないですが、総合的に過激。気まずい箇所もあるので一人で鑑賞推奨の映画です。

こんな感じで、正義のためなら手段を選ばずにどんどんと行動をしていく諸星なのですが、これがいつか崩壊するのは誰の目から見ても明らか。その「成れの果て」は見ていて痛々しいですし恐ろしい。成功するには危険を冒さないといけないのかもしれませんが、行き着くところがあまりにも悲惨なことだってあります。
実話ベースということなので、物語そのものはフィクションのようですがモデルの事件があるようです。北海道警察の方々は今作を目の当たりにした時、どういう気持ちになるのでしょうかね?(笑)こういう社会派映画を面白く、そして涼しい顔で作ってしまう白石監督に関しても素晴らしいと言う他ないですね。

また、今作で最も印象に残った言葉が、キャバクラで先輩警察が諸星に放った言葉です。公共の安全なんて人間がいる限り存在しない。本当にそうしたけりゃ産婦人科になることだ。。これの意味するところは本編で確認してください。妙に納得したし恐ろしいと思いました。しかしそれは、人間の平和ではなく、地球の平和といったほうがしっくりきますね。

少し謎が残るものの、十分な出来です。公務員のやっている事全てが正しいわけではないということを痛感させられた傑作でありました。見て損はないはず。綾野剛のファンであるならば是非ご鑑賞あれ!
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