あゆみ

ビハインド・ザ・コーヴ 捕鯨問題の謎に迫るのあゆみのレビュー・感想・評価

1.0
こんな酷い映像のかたまりを見たのは初めてだ……。酷すぎてドキュメンタリーと呼ぶことすらできない。意味も脈絡もないぶつ切りで垂れ流されるインタビューと、新規性のない嵐のような資料の物撮り、情報が薄くインサートした意図がわからないパワポスライド。構成、編集という概念も、訴えかける熱量も感じ取れない……。

恥ずかしながら動物自体に興味がなく、イルカショーやイルカ猟について特に意見を持たず生きてきてしまった。が、動物倫理について周りの意識が高まる中で、大変今更ではあるものの、まずは『ザ・コーヴ』と、そのカウンター映画と銘打っている『ビハインドザ・コーヴ』を観てみることに。
『ザ・コーヴ』はやり方や演出に問題はあるものの、それまで誰も見られなかった現場を映して世に出したことに一定の意義はあると思った。一方、本作では捕鯨の歴史と関係者の主観を繰り返すばかりで、肝心のイルカの追い込み漁と殺戮に関する言及は一切なく、何のために撮ったのか本当に理解できず困惑するばかり……。

とにかく意思を持たぬインタビューがすごい。冒頭10分から何の説明も注釈もなく、以下のような一言コメントがぶつ切りで続く。

元漁師「コーヴのようなことはモラトリアムがなければおきないこと」
監督「あ~大型捕鯨の、縛りがなければ、ふ~ん」
(終) 

IWC日本政府元代表
「昔、イスラムの婦人から『日本は宗教の問題で殺し合ったり罵り合ったりしないからすごい立派だ』と言われたことある」
(終)

監督「今度捕鯨の話を聞かせてください!」
街の80代男性「もうあかん、もう忘れた」
監督「嘘でしょ〜」
男性「もう40年になる」
(終)

日本捕鯨協会会長
「『横浜ベイスターズ』の前は『たいようホエール』という球団だったが、ハワイでキャンプすると石をぶつけられるので名前を変えた」
(終)

IWC日本政府元代表
「外務省もそう(捕鯨をやめれば良いと)思ってる。クジラでいくら儲かるんですか?日本のGPA…GNPの中で何%ですか?やめたらどうですかって」
(終)

………何を見せられているのか?このテンションで1時間47分。有識者枠と思われるインタビューも、語り口のおぼつかない後期高齢者ばかりで機能していないし、市民の癖もまた強い。

弱腰な日本を批判するおっちゃんたちのやり取り
「昔はアメリカ人も取っとったんやろ、クジラ」
「油」
「ノルウェーみたいにしたらええ」
「日本はもう連合赤軍くらいまでよ。デモで自分の考えを主張して行動したんやろ」
(終)

お祭りにクジラを買いに来た年配女性
「北朝鮮みたいに我が道を行くでいいんじゃないですか。ちょっと過激ですけど。他所の国のことは文句言うなと。なくしてほしくないですね、ソウルフードっていうんですか」
(終)

まさか連合赤軍がここで出てくるとは思わないし、後半には真珠湾攻撃の話になったり、古事記の神武天皇が出てきたりと……。これ、捕鯨を守りたい立場からの発信だと思って見ているのですが、認識に間違いないですかね!?

物撮りもすごい。あるもの全部撮って並べたのかというレベル。資料館に展示されているような鯨を使った古道具や鯨漁の歴史を伝える絵巻に始まり、「漁師さんありがとう!おいしい鯨をいっぱいとってきてください」といった捕鯨船の漁師宛ての小学生の手紙まで……。

そして本当にどうでもいいことなんだけど、『ザ・コーブ』のルイ・シホヨス監督にオンラインインタビューを行っているシーンで、なぜかMacが全画面表示になっておらず、デスクトップのファイルが見える状態に。「毛穴ケア」という名前のファイルを見つけてしまってからはそれが気になり話に集中できなかったです🥹

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あゆみ

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