菩薩

現代好色伝/テロルの季節の菩薩のレビュー・感想・評価

現代好色伝/テロルの季節(1969年製作の映画)
3.8
革命運動から離脱した元活動家の動向を探る公安の刑事二人、隣室に陣取り盗聴器を仕掛け彼が再び動き出すのを刻一刻と待つが、男はなかなかそんな気配を見せようとはしない。それどころ彼はその小さな部屋の中に自らの王国を築き、一夫多妻制を敷き二人の妻(?)と夜な夜な生殖を目的としない純粋遊戯な性行為に耽り続ける。どうにも納得のいかない公安刑事、こうなれば暴力を用いても奴を犯人に仕立てあげなければ気が済まないといきり立つ、さぁさっさと尻尾を出すのだと、まるで起きていない犯罪を期待するかの様な態度を取り続けるが、男は昼間もタバコを吸ったりラジオを聞いたりまるで屍の様な生活を続けていく。そんな男の所に突然かつての仲間がやってくる、酒を酌み交わしながら組織への復帰を促すかつての仲間に対し、彼は平然と「俺はもう戻らない、運動はやめた、どうでもいい。」と返答をする。遊戯的革命の否定、彼らが建設を目論むユートピアの批判、その全てがナンセンスである!徹底的に運動を否定し続ける男の声を聞き、公安刑事も遂には諦めて捜査を打ち切る。

1969年11月17日、佐藤栄作総理渡米予定日、羽田空港には男の姿、腹にはダイナマイトを巻いている。見上げる先は管制塔、しかと見据えたその先に、彼は覚悟を歩みを進める。集団では無く個の、たった一人の訪米阻止、その時彼はこの革命の勝利者となった。
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