はるな

ガキ帝国のはるなのレビュー・感想・評価

ガキ帝国(1981年製作の映画)
5.0
1967年大阪、年少を出たリュウは不良仲間のチャボ、ケンと共に毎日喧嘩に明け暮れている。暴力は次第にエスカレートしていき、大阪二大派閥の北神同盟やホープ会をも巻き込んだ覇権闘争へと発展していく。

井筒和幸監督の初期作ということで、『パッチギ』やその他一連の監督作で一貫して描かれてきたテーマが今作にもしっかりとあったように思う。まあしかし、今作は『パッチギ』以上に生身感というか、衝動性みたいなものが剥き出しに表れているようだった。昭和42年の空気感を丸ごと真空パックして閉じ込めたような大阪の街も強烈でそこを強調している。井筒監督はいつも不良とか暴力とかを描くときそれを美化したりカッコいいものみたいに見せたりせず、何なら悲壮感すら漂う本当に”無意味なもの”として描いてきた。喧嘩シーンでさえアクション的な見せ場とかは無く、ちょっと引きで撮って何なら滑稽にも見える。所詮ガキの喧嘩。こういうところの喧嘩とか不良とかの美化されなさっぷりにむしろ誠実さを感じるし、こういう誠実さこそが井筒監督らしさなのかなと思う。
終盤に向かうにつれ暴力を振るう相手も大きく悪くなっていくと、たとえ最初はガキの喧嘩で始まったことだとしても取り返しのつかない悲劇に繋がっていく。そうすると「あ~あガキの喧嘩で良かったのにね」と最悪な余韻だけが残る。

リュウは今でいう半グレみたいなもので、組織には属さない主義を貫き誰彼構わずメンチを切る。「北神同盟もホープ会もしょうもないわ!」つって。でもどうしてもぶっ飛ばしたいやつがいるから、そいつと戦うためにと作ったチームがホープ会改めピース会。「お前ら今日からホープやなくてピース吸え!」
噛んだセリフそのまま生きにしたり大阪弁がきつ過ぎて時々何言ってるか分からなかったり、そういうとこも含めて映画全体が暴力性に満ちていてその点もこの映画には合っていて良し。その点で一番最高だったのがリュウの「絶対真空飛び膝蹴りキメたんねん」ってセリフ。まだガラケー使ってたら着メロにしたいくらい好きなセリフ。
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