がちゃん

ガキ帝国のがちゃんのレビュー・感想・評価

ガキ帝国(1981年製作の映画)
4.2
大阪を舞台にした作品は数多くありますが、個人的には本作が一番好きです。同時に、井筒和幸監督作品の中でも一番好きかもしれません。

昭和40年代前半の大阪。
島田紳助・松本竜介・趙 方豪ら三人は、好きなように大阪で遊び、大阪キタ地区を牛耳る北神同盟、ミナミを牛耳るホープ会らの不良グループとは交わることなく、いつも喧嘩に明け暮れる日々を過ごすのだが・・・

という感じの作品なのですが、登場する若者たちが本物の大阪弁で本物の大阪を暴れまわる描写が秀逸。
昭和50年代後半に撮られているはずなのに、見事にその時代を再現している。
なぜか日本全国のお土産が売られていた百貨店阪神百貨店地下の通称・アリバイ横丁の場面などひたすら懐かしい。

暴れることでしか屈折したエネルギーを爆発させることができない若者たちの憂鬱も伝わってくるし、悲劇的な結末になる前に、竜介(役名はチャボ)が紳助(役名はリュウ)に本心を伝えるシーンなどは哀愁があって名シーン。

ジャズっぽい音楽もよくて、北神同盟のリーダー格にのし上がった紳助たちのライバルの・明日のジョーの恋人が霧の中に消えていく場面にかぶさる音楽が心に残る。

ヤクザの幹部役の上岡龍太郎の貫禄は流石だし、在日朝鮮人の差別に関する描写も少し出てくるがそれが声高でないのがいい。

反体制同士で喧嘩していた喧嘩相手が体制側についているのを見た・趙 方豪がそいつを殴り飛ばして居酒屋に駆け込みビールを注文するラストまで、とても瑞々しく、暴力満開の作品なのに爽やかともいえるような余韻が残るのがとてもいいです。

誇張のないあのころの大阪がこの作品の中にはあります。
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