むぶどん

亜人 第2部「衝突」のむぶどんのレビュー・感想・評価

亜人 第2部「衝突」(2016年製作の映画)
4.0
劇場版亜人3部作の2作目。亜人でありながら佐藤とも敵対している主人公・永井圭 / 亜人管理委員会の役人・戸崎 / 佐藤率いる亜人テログループの3つの視点から物語を描く。圭は穏やかな生活を、戸崎は佐藤によるテロの阻止を、佐藤は亜人の権利獲得のためのテロを目的にそれぞれ行動を起こす。佐藤の本性を知り止めるために圭に協力を求める亜人・中野攻、佐藤を逃した事で窮地に立たされた戸崎の後釜を狙う曽我部、新たに亜人テログループに参加したハッカーの奥山 / 興味本位での加入となる高橋・ゲンといった新キャラが多く、群像劇の形式で話が進んでいくのも特徴のひとつ。第2部でもキャラやIBMのモーション・音楽・音響の完成度は高く、今作の目玉となる佐藤らのテロの描写は実際に起きた事件を再現しているのかと思ってしまうほどリアル(諸般の事情からか、原作とはテロの方法が変更されている)。佐藤の狂気ぶりを真正面から見せつけられるのもこのシーンであり、また最終章に向けての伏線や展開も多いので、ダレがちな2作目でありながらその存在感は非常に大きい。また主題歌も良質。第1部は逃げ惑う圭の心情を表す歌である(こちらも良曲)のに対し、今作は半ば不満を漏らしつつも自分の宿命に立ち向かう圭の意志を思わせる勇猛な歌になっており、エンディング前の引きを際立たせるのにも一役買っている。
惜しむらくは105分の中にTV版の7〜13話と16話の半分ほどを詰め込んだ作品だからか、微妙にキャラの挙動が加速されたりある大事なシーンでキャラの口が開いていないのに大口を開けたような笑い声が流れているなどの不自然な点がいくつかある事。映画の尺に収まるよう編集したとしても、口パクのズレは再収録なり合わせるなり対処をして欲しかった。また、第2部公開前にTVにて7〜12話が放送されてしまっていたため、退屈に感じてしまう人もいた(ただしこちらは合間合間に新規シーンを挟む・カットしてテンポを良くするなどといった工夫がなされており、劇場の音響の効果もあって変わらず楽しめたという人も多いが)。第1部と最終章はTV放送に先駆けて公開されていたので、新鮮味においてはどうしても劣ってしまうのが難点。なお、この部からアニメオリジナル描写・展開が増えている。今作では基本原作での展開の補完が多くそれほど違和感はない(ひとつだけ大きく改変されたイベントがある)が、次章は途中からオリジナル展開に進んでいくため、原作通りにはなっていない。
前述した通り少し見にくい部分もあるが、ストーリーを追うのなら不足のない一本。是非サラウンドスピーカーを付けて鑑賞されたい。