りっく

BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアントのりっくのレビュー・感想・評価

1.5
スピルバーグが童心に帰ったような一作。孤児、父親のような存在など要所にスピルバーグらしいテーマが散りばめられ80年代に手がけたファンタジー映画を彷彿とさせる匂いと、巨人から逃げ惑う少女の描写はジュラシックパークを想起させる。だが、過去から一貫して変わらない作家性を確認することが、映画としての楽しさに繋がっているかというとそうではない。

本作には子供をさらって食べてしまう巨人を「悪」として描いている。だが、彼らは果たして悪い奴らなのだろうか。後半に英国政府も交え彼らをヘリコプターからの網で捕らえ、彼らの嫌いな海に落とし、無人島に隔離し、彼らの嫌いな食べ物を頭の上に落とす。

彼らを物語的に分かりやすい悪役にするのであれば、少なくとも人をさらって食べるまでの描写を1度でいいから入れるべきだ。それがないからこそ、本作は人間側の価値観を一方的に押し付けた非常に暴力的な映画に見えてしまう。それはユダヤ人であるスピルバーグの想いが投影されているのかもしれないが、少なくともディズニーの子供向け映画でやることではない。

また巨人の描写も気になる。スピルバーグ映画の悪いところであるが、人間以外の生物、特にコメディリリーフのようなキャラクターを描くときに、人間が見下すような、ただオツムの弱いような印象を受けてしまう。

イマジネーションは流石だが、そういった文化的な配慮に欠ける本作は、スピルバーグ映画の中でもワーストに近い、失望と怒りが込み上げる作品だった。
りっく

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