アーリー

君の名は。のアーリーのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.5
2023.5.11

当時高校生やった頃にめっちゃ流行った作品。あまりにも流行りすぎてて逆に劇場に観に行かんかったのは後悔もあるし、ある意味いい思い出でもある。

とてつもなく爽やかな作品。これまでの新海誠作品の中で1番ポップで明るい。それが写実的に描かれた自然と青空の風景や街並みとマッチしてて、さらには高校生の恋愛青春映画要素も入って、非常に観てて楽しい。RADWIMPSの楽曲も今作を盛り上げるし、曲そのものやかかるタイミングが最高。売れない訳がない。

かといってそれだけではない。入れ替わりの時間軸がズレていたというSFっぽい感性があったりとか、「雲の向こう、約束の場所」でも描かれたような夢の中での出来事を忘れてしまうこと。さらには彗星が落ちて町民が全員死んでしまうことなど、色々な展開がなされてて飽きない。誰かを探しているような気がする、と始まる今作。ど真ん中青春をやってるように見せかけて、ちゃんと瀧と三葉の恋愛は一筋縄ではいかないようになってる。「雲の向こう〜」では結局メイン2人は別々の人生を歩むことになる。今作は入れ替わりの期間の記憶を亡くした瀧と三葉がもう一度出会う所で幕を閉じる。流石に作品の雰囲気的にバッドエンドには出来ひんかったんやろうな。まぁただ出会っただけ。これまでの新海誠やったら、普通にその後うまくいきませんでしたって軽く言いそう。「天気の子」を観るまで、ファンは気が気じゃなかったかも。新海誠は「雲の向こう〜」が30歳ぐらいで、今作が43歳ぐらい。歳をとると尖った終わり方は出来ひんくなるんかな。というか約10年越しに同じような展開をするの凄いな。

ただお互いの時間のずれにここまで気づかないのかという疑問はある。入れ替わった状態で過ごすのも現実では結構無理あるやろうけど、まぁそれはアニメやからで済ませられる。ただ年代が違うのは流石に気づくはず。ここだけが引っかかるポイント。あと忘れる前にお互いの手に名前書いとこっていう場面で、好きだって書いちゃう瀧に笑う。言い出したんお前やのに。
あとは2人の恋愛感情がいつ芽生えたのか。会ったこともない人と入れ替わる。その人の人生の1日を代わりに生きる。つまり一緒に過ごしたわけでない。思い出を共有しているわけでもない。だから恋とは別の感覚でお互いを気になってる状態やと思う。恋愛とはちょっと違う特別な関係。そう考えると瀧と三葉の未来は、同じ人生を送ることではないのかも。もし「雲の向こう〜」の時期にこの設定で作品を作っていたら、こんな青春な感じではやらんかったんやろうな。あとラストちょっと失速したような感じがして残念。三葉が親父を説得するシーンを省いたのはなんでやろう。普通に考えると、親父からしたら三葉はほんまに狂ってるようにしか見えへんもんな。観客にも納得させれるような説得の仕方が思いつかんかったんかな。

田舎と都会の結びつけ方も良かった。それぞれが持つ良いところがちゃんと表現されてる。あと新海誠作品の持つポエム的な要素を野田洋次郎の歌詞が補っているように思える。ほんまにいいコンビなんやろうな。ポエムも伴奏を付けたら受け入れやすい。歌の歌詞なんてある意味ポエムやし。

新海誠の良いところを前面に押し出して、悪いところをばっさり切り落としたような、そんな作品。10年後、20年後にでも残ってると思う。自分の子供がもし生まれたら一緒に観たい。どんな感想が聞けるのか、凄い楽しみ。
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