えいがのおと

君の名は。のえいがのおとのネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

美しい映像と音楽で、青春らしい気持ちのいい映画だった

入れ替わりというありがちな設定だけれども、現代のスマホ世代の高校生というだけで、妙なリアリティが生まれ、入り込んで楽しめる。
入れ替わりがあれば、入れ替わらなくなって恋しくなることも、また必須であるのだけれども、そこに震災を彷彿とさせるような物語を交えたことは、奥行きができてよかった。
だからこそ、タイムリープ的な話の鉄則な、現実は変えられないというオチを予想させつつも、しっかり王道のハッピーエンド展開にもっていったことで、逆に観客を裏切ることができていた
作品の根幹として、田舎と都会に生きる2人が入れ代わるというものなはずだが、そうした観点で見ると、2人が最後に東京の街で出会ってしまうのは残念だった
というのも、三葉が初めて東京を目にするとき、彼女はキレイだと言うのだけれども、彼女の暮らしたあの街こそ、現代の私たちが失った美しさを持っているのである。そのことに瀧は気付き、成長している様が感じられるのだが、三葉においては生き残り、瀧を想うというだけであり、平然と東京の街に生きているのである。エピローグ部分がくどくなるのはいかがなものかと思われるが、サブキャラの想像できうる、その後を描くぐらいなら、何か彼女の物語を描いて欲しかった。
全体の語りは、冒頭、後半と共に謎の1日を作り、謎解きをしていく形式で、引き込まれるものだった。
RADWINPSの音楽は、世界観にぴったりな青春色で、彩りを添えるだけでなく、付かず離れずのちょうどよい距離感であった。
それにしても、タイトルや繰り返される、名前にまつわるエピソードは、象徴的で洒落ているのだけれども、物語を動かす大きな原動力というわけでもなく、軸となるストーリーに反して、薄っぺらく感じてしまった。

編集二度目
名前にまつわるエピソードについて、このように指摘したのだけれども、朝、実際に自分が夢を見て目を覚まして、とても単純なことを見落としていたことに気がついたので、少し訂正したい。
僕は、名前の記憶の消失が、ファンタジーものによくある、あんだけ色々やったのに、なんでかわからないけど、一連のその出来事が終わると思い出せなくなってしまうそれ、というように解釈していた。
なので、そんなに大切なら名前くらいなんとか覚えとけよ、といったように少し冷めて見てしまった。
しかし、自分が夢を見る睡眠をして目を覚まして、その夢をなんとか思い出したくなった時に、このことだったのかと一致した。
あくまで、寝ている時だけ入れ代わるという、夢をモチーフとしている物語だから、多くの人が目を覚ますと夢の記憶が虚ろなように、大切なはずなのに好きな人の名前も出来事も忘れてしまうのだ。
それが、冒頭の三葉とラストの瀧が、その部分では少し対象がずれているようにして使用する、共通の言葉で示唆されていたのに、気がつかなかった。
そのことを踏まえると、ストンと2人の行動が腑に落ちて感じられるようになった。