かえで

君の名は。のかえでのネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

夏の終わりにこの映画に出会えてよかった。世間の評価が高いのも納得だし、アニメーション史に新たな風を吹き込む作品だとも思う。新海監督はポスト宮崎駿とか細田守とか言われているけれど、二者とはまた違った新しい魅力をもって、両者に並ぶアニメ監督として台頭してきた印象。個人的に新海誠作品で苦手に思っていた要素が全て良い方向へ昇華されていて良かった。特に苦手だったのが長々しいモノローグで、折角映像作品なのに何で全部言葉で説明しちゃうんだろう、といつももどかしく思っていたけれど、本作はモノローグが良い塩梅に効果的に使われていて良かった。今までは内向的な作品ばかりだったけれど、本作はすごく外向的で、良い意味で万人受けする作品になったと思う。新海監督作品は精神的に抉られるので一度観るとしばらくはいいや…となるものが多いなか、本作は繰り返し観ることでより楽しめる作品なので、そういうところも良いなあ。声優陣の使い方もすごく上手くて、特に長澤まさみがハマり役。

すごく好きだなあと思ったし、笑ったし感動したし、世間の評価が高いのも納得できるのだけど、野暮な疑問点があって手放しに絶賛はできないなあ…というのが個人的な所感。

主に、「日々の生活の中で、日付や曜日のズレについて何も気づかないことなんてある?」というのと、「そもそも序盤では入れ替わった記憶は目が覚めると忘れる設定だったのに何故いつの間にか都合よく覚えているの、そしてまた最後は都合よく忘れるの?」という2点。ここがどうしても気になってしまって、作品に乗り切れなかった部分がある。彗星による災害のことを瀧くんがまるっきり忘れているというのもどうかと思ってしまうよ…。なんていうか全体的に、「ストーリーのためにキャラクターが都合よく動かされている」感が強すぎて。まあでも、この映画の本質や主題はそんなところにあるんじゃないのは分かっているんだけど(ちなみに「アバウト・タイム」を観た後も全く同じ気持ちでした)。 気にしなくても良い、というかむしろ気にしたらお終いな、設定の曖昧さ・些細な矛盾点をどーーーうしても気にしてしまうのは私も悪いんだけど、もう少し疑問を持たないような工夫があったら良かったのにな、とか色々とモヤモヤ…。あとは主人公二人がいつお互いに惹かれていたのかもいまいちよく分からなくて、そこももやもやポイント。三葉&奥寺先輩の方がよっぽどお互いを好きになる過程が分かるように感じます(笑) とはいえ、ラストでは「2人が会えて良かった~~;;;;」と感動してしまったのだけれどね。
あまり深く考えずに作品の疾走感に身を任せていれば間違いなく最高に楽しめる作品だと思うので、捻くれた心は置いてもう一度、観に行きたいなと思っています。
かえで

かえで