タンシロ

何者のタンシロのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.8
この作品の登場人物はまさに演劇のように穿った個性を放っており、それぞれがそれぞれに独特で違った考えをもつ者同士がひとつの部屋で就活対策を練る。
キーマンのひとりは個を重んじ個性に憧れる。実体のない成功を追いかけて、実体のある物の悪い部分をあげつらえ非難する。そしてそんな姿に惹かれるのがキーマンの2人目。承認欲求の魔物に取り憑かれ、自分の努力や軌跡を発信せずにはいられない。人に共感するよりも自分を認めてほしい。マウントや同調圧力でアイデンティティを確立しようとする。最後にこの2人を静かに裏で非難する観察者。一見、もっともらしいことを言って批判しているように思えても、その批判する姿はとても姑息で臆病。「頭の中にあるうちは傑作」という必殺の言葉がブーメランであることに気づけていない。周りからは観察や分析が得意だと思われていても、それは周りの人間が優しく、残酷だからだ。
殻の中でニヤニヤと他者を批判する人間を誰も救ってはくれないし、ましてや殻の中にいっしょに入って同調してくれる人は誰もいない。この作品に出てくる魅力的な人物の何人かがなぜ魅力的なのか。この映画はそこの見せ方がとても上手いと思う。彼らは確たる自分を持っている。それは自分の気持ちをきちんと声に出して、自分の言葉で、目の前で聞いている人に、自分の生の声を届けているからだと思う。
タンシロ

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