大道幸之丞

何者の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

何者(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

就活で心揺れる大学生の建前と本音がSNSを介し交錯する。朝井リョウの原作映像化

二宮拓人(佐藤健)のキャスティングでこの映画はうまく行ったも同然だったのかもしれない。就活でゆれる大学生の姿を彼一人で充分表現出来た感がある。

田名部瑞月(有村架純)がただ一人、実家の事情から自分勝手に就職先を選べる状況ではなく現実感から物事を「観ざるを得ない」。劇中唯一「まともな人」の位置の人物。

海外帰りをひけらかし天下を獲ったような物言いをするも就活はダダ滑りの小早川理香 (二階堂ふみ)は拓人とふたり、裏表を抱えながら友達との関係を縫って歩く

お説教臭いまとめでいうと、SNSで新たな自分を設定しても本体はなんら変わることも、SNSで高みにいるかのような視点で書いても現実は滑り止めの内定一つ出ない状況で、その現実にしっかり向かい合いなさい——といったところか。SNSにハマりすぎると自身が「何者」かを見失うことになる——

拓人が隆良と銀次が「似ている」と口にすると、サワ先輩が言下に「全然似てないよ」と否定される事でうろたえるが、それも本当は当たっているかも怪しい。姿勢が定まっていない拓人を見透かして敢えてそう言った可能性もあるのに、拓人には妙にその言葉が刺さってしまうのも脆弱だ。

バンド活動や演劇を引きずりながら、どこか就活になると「何かを捨てる」ことがCoolで大人への儀式のように思え、皆峻別しようとするが、決して完全に断ち切れることがない。誰にでも一度は経験する蹉跌がSNSを介して描かれていてよい。

神谷光太郎(菅田将暉)がらしいキャスティングでいい存在感を出してくれている。

エンディングタイトルの「NANIMONO(feat. 米津玄師)」ももはや完全に懐かしい。