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何者のrensaurusのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
4.0
登場人物一人一人の価値観に照らし合わせながら、自分の人生を考え直せるような作品だった。定期的に見たい。

拓人のように、自分が本気で好きだと思ったものにさえ、メタ的に恥ずかしさを覚えてしまう人がなんと多いことか。自分はそれに取り組むことを放棄して、取り組んでいるギンジに対しては自分を投影して中傷する。「恥」と「足の引っ張り合い」という日本人の本能に訴え掛けられた拓人の行動を見るのが本当に苦しかった。

自分がやりたくて、自分が社会の中でやれる仕事を本気で取りに行かなきゃ、拓人のように他人を笑いながら自分に酔って、いつまでも挑戦しない失敗者になり続けるだけで満足することはないのだろう。資本主義の物差しで自分を測って、他人の価値観と比較して体裁を気にしてても、リカのように満たされることはなくなってしまう。

瑞月は行動する勇気を称賛しながらも、環境が枷となっていることを理由に自分自身の人生を選ぶ行動に出られなかったし、せめてもの想いで告白した光太郎にも振られて終わった。グローバル思考という軸を持ち、他人を観察することも得意で、躊躇わずに指摘できるというある種の能力がありながら、実家に小ぢんまりと収まった。光太郎は表現に優れ、人を気遣うことができ、要領もいいので希望の職にすぐ就くことができた。握手を求められたように、真っ直ぐ行動を起こしたことで評価も付いてくる。でも光太郎は好きな人に会いたいがために選んだ仕事で納得出来るのだろうか?納得できなくても、持ち前の表現力とコミュ力で自分の居場所を作り上げるんだろうな。

サワ先輩は論理的に想像力と観察力を養えており、個々人の価値観を見抜くのに長けているため、達観し、落ち着いている。資本主義的な欲もなさそうで、研究というやりたいことを出来ているように見え、羨ましかった。タカヨシは、集団に飲み込まれて思考停止することを嫌いながらも、マイノリティや体裁に酔いやすく、自分の指針を見つけられない段階に見える。それでももう一度就活に取り組もうとしてみたり、模索している感じがかなり素直で柔軟だと思った。

拓人の部分を無くすことは簡単ではないが、他人に当たることは絶対にしたくない。リカのように基準を世間に委ねないようにしたい。瑞月のように正論が分かっているのに逃げるようなことがないようにしたい。光太郎とサワ先輩とタカヨシのハイブリッドのような人にわたしはなりたい。

また時が経って見直したら、違った印象になるのかな。
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