かえで

何者のかえでのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.4
就活×SNSという、他人と自分との比較活動が活発になる二要素を用いて人の中にある汚い・醜い部分を浮き彫りにするという発想自体はとても面白いなあと思ったけれど、作品を通して別段新鮮さは感じなかったかな…。
肝心な所でリアルさがないのでいまいち感情移入できなかったし、どんでん返しと謳われる結末は「知ってた」状態だったのが残念。(こういう風に思ってしまうから、「ラストの衝撃!」みたいな宣伝文句ってほんとやめた方が良いと思う…) なんだか全体的に中途半端な感じがしてしまった。「桐島、〜」を観たあとは頭がぼーっとするような虚無感・脱力感に襲われたけれど、本作はひたすら「無」っていう感覚だった。なんていうか空っぽな感じ。

個人的には「抉られる」という感覚はあまりなかったかな。こういう感情と無縁だから、というのではなく、むしろ「多かれ少なかれ誰でも他人に対してこういう風に思ってるでしょそりゃあ」という気持ちで。よく考えたらそれはそれで恐ろしいことなんだけど。あと、「友人の内定先の評判をインターネットで調べる」行為について、「普通に友達のことが心配だからだと思った」という感想を結構見たのだけど、私はここ、何の疑問も持たず普通にスッと受け入れてしまってて、自分の性格の悪さを思い知りました。笑

『就活=青春の終わり、人生の始まり』というキャッチコピーはすごく好き。長い長い学生生活が終わってしまうせつなさ、それでもきっと明るい未来が待ってると信じてがむしゃらに進まなきゃいけない、あの頃の気持ちを思い出して少しセンチメンタルな気持ちに。社会人になったっていきなり何者にもなれるわけないこと、自分を含めて完璧な人間なんてそうそういないこと、そんなことは実際に社会に出て仕事をしている今となっては当たり前のことなんだけど、就活という異色なイベントの中ではそういう風に思えないんだよね。自分には一体どんな価値があるのか、これからの人生設計はどうするのか、なんてモラトリアムを謳歌してきた今まで考えたこともないような課題を唐突に課せられて、何だか周りもそれにきちんと応じられているように見えて焦って、無理にでも何者かにならないといけないような気がして。お祈りメールが来るたびに自分自身を否定された気になるし、内定を貰えたら全てを肯定された気になるし。そういう、就活の「独特な気持ち悪さ」みたいなものを本作は絶妙な加減で表現しているなあと思いました。

あと、キャスト陣はほんとにもう最高すぎるので、それだけでも充分に楽しかった!!菅田将暉くん演じる天真爛漫系男子・光太郎くんがもうひたすらに可愛くて良い子で、そりゃモテるよ…誰もが好きになっちゃうよ…!!と思いながら観てました(笑)クリエーター系岡田将生も、聖母な有村架純ちゃんも、意識高い系二階堂ふみちゃんも全員ハマり役で素晴らしい!キャスト陣が好きならそれだけで楽しめると思うので、ファンの方々は是非是非。
かえで

かえで