ケンジモンデン

何者のケンジモンデンのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
4.0
原作既読。
最後のオチ等どう見せるんだろうと思ってたけど、比較的原作に忠実で良かった。映画ならではの表現もあって、どちらが先でも楽しめると思います。

ただ、「就活」の中にあるテクニックだったり、SNSの裏アカウントだったり、20代の『イマ』をある程度知らないと、刺さらなかったり置いていかれたりするのは確かだと思う。ここまでターゲット絞ってる物語も珍しいのかな。

そして絞られたターゲットに対しては誰かしら何かしらの傷を与えるという。ある意味観客誰も幸せにならん笑
表現者も分析者も意識高い系も、すごいすごいと言われながら角度を変えれば滑稽で裏では嘲笑の対象になっていて、でもそれをみんな表には出さずに笑って過ごしているという、なんとも悲しい物語。「桐島~」の瑞々しさ同様に、若者のイマを切り取る朝井リョウならではの視点。
映画ではそれでもラスト一筋の光を与えていたところに希望を見た。
誰に「何者」かを定義してもらおうとするな。自分が「何者」か、自分で分かっていればいいのだ。

しかし。同じ人が手掛けた『電車男』(最近久しぶりに見直しました)では「何者」でもない2ちゃんの住人がみんなに応援される「ヒーロー」になったのに、10年経った『何者』では「何者」にもなれず、さもなくば叩かれる対象だもんね。インターネットの浸透。SNSの普及。確実に日本は変わったなと思います。そんなことも感じた映画。

佐藤健のどこか熱のない目がとても良かった。
あと、米津玄師×中田ヤスタカの主題歌が良いなぁ。いつもと違う音域で新鮮。
一人で観て、終わって「ううっ」てなるのがおススメです。