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何者のmovieJackのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.8
当初鑑賞するつもりは無かったのですが
TBSラジオ
ウィークエンドシャッフルの
宇多丸師匠の絶賛と
こちらの評価でも桐島の続編的とのレビューも散見され
桐島が大好き私としては
居ても立っても居られず慌てて鑑賞するも…

夜勤明けには辛い淡々とした展開
全員が感情を抑えた演技と台詞に度重なる寝落ち
台詞があまり頭に入らない…

男女3対3なのに性的表現や
喜怒哀楽表現が極力抑えられ
全員の表情も何と言うか能面みたいに
敢えて魅力を消しているような無表情にずっと違和感を感じていたが
ラスト前での演劇的な展開で
なるほど全て計算されていたとは…

ストーリーは一応就活が題材であるが
主人公の拓人(佐藤健)が学生時代に打ち込んでいた演劇に絡ませ
就職活動の面接では良い印象を与えるために自分を演じ
また学生時代では誰もが少なからず
他人に好かれるよう演じている
それは大人社会も同じ

そして誰もが生きている以上
他人と接するうえでどこか演じている部分が有り
全て自然体な人も居るかもしれないが
自制心によりコントロールし我慢しながら行動したり
こうすれば良い人に見られるであろうと
僅かながらでも考えながら生きている事が有ると再認識させられた

私は昔から人間は
本能で他者と比較し
少しでも自分が優位だと思いたく
欠点・障害・人種・能力・学力・身体的特徴・経済的立場等により
あの人と比べれば自分はまだマシと捉え
精神の安定を保つ生き物と思っており
マスコミやワイドショー等の弱者を見付けた時の集中攻撃もその最たる物とも考えている

日常生活でも心の中に沸き上がる悪意的な思いや見下し感が今作では今風にツイッターでの呟きとして描かれているが
誰しもが絶対心に思い浮かべた事の有る悪意の部分をこれでもかと見せ付け
自分に置き換えると
解ったから、もうやめて…
とただただ猛反省…

また演劇的表現では
誰もが自分劇場の主役を気取り
日常生活で立ち回っているがそれは自己満足的で
周囲からの評価は同情の拍手程度
一番伝えたい好意を持つ相手には全く伝わらず
拍手さえもされない点もグサリとえぐられた

背中越しの希望に満ちたラストショット以外
全般的には余り桐島的とは思いませんでしたが
30代40代には今までの行動を顧み
今後改善できるよう
10代20代にはこれからの思考・言動を考える機会となり
どこか刺さる部分が必ず有る作品で
良い映画体験となるでしょう
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