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囚われた少女たち/選ばれし少女たちのpongo007のレビュー・感想・評価

4.6
 メキシコのティフアナを舞台にした人身売買の話。

 人買いをなりわいとしている犯罪者一家の次男が、父親に命じられて女の子をナンパして恋人に。肉体関係を結んで自分に惚れさせてから「お金に困っている。やばい筋からお金を借りてしまった。お金を返さないと殺されてしまう」と泣きつきます。女の子を混乱させ「僕を愛してる?僕のためにお金をつくってくれる?」と甘え、女の子の思考を停止させ、売春宿に連れて行きます。

 一度売春宿に連れて行かれた女の子は暴力で服従させられ、24時間監視体制の下で売春をさせられます。売春に行く時以外は自由に外出もできず、電話も取り上げられ、誰にも助けを求められず、孤立します。そして逃げ出すことを諦め、毎日管理売春をさせられるのでした。

 連れてこられる女の子は、12歳とか14歳とか、まだ世間をよく知らない若い子たちがほとんど。性病になって体がぼろぼろになるか精神的に廃人になるまで、毎日売春を強要され、自由と思考を奪われ、奴隷となります。少女が失踪した家庭では、警察に失踪届を出したりもしますが、警察もこの犯罪者一家とつるんでいるので、摘発されることはなく、囚われた女の子たちが戻ることはありません。

 という、深刻な問題を扱った社会派ドラマです。見ていて本当につらく、女の子たちが可哀相でなりませんでした。世の中、本当にどうしようもない犯罪者たちがいるのだなあと、深い憤りを覚えます。女の子たちを買いにくる男たちも全員クズ。こういう連中も取り締まってほしいものです。

 本作はメキシコが舞台ですが、日本でも管理売春は大きな問題です。借金から風俗に売られたり、東南アジアや中南米、ヨーロッパなど世界中から借金漬けにされた女性が来日し、お金持ちの日本人相手に管理売春をさせられているケースは無数にあります。

 日本政府は「日本は美しい国で、(メキシコのような)管理売春や人買い、人身売買はない」との立場ですが、日本で行われている人身売買は、毎年のように国連人権委員会で問題視されるくらいの大問題となっています。

 本作を見た人は、これは遠い国の話ではなく日本でも同様のことが起きていることを考えて欲しいと思います。人身売買はどこの国にもある。常に弱者が狙われている。人が人を支配したり、売買したりすることのない社会になってほしいものです。みんなに見てほしい映画でした。
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