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座頭市地獄旅のcatmanのレビュー・感想・評価

座頭市地獄旅(1965年製作の映画)
4.0
原点回帰を果たした名作と評されるシリーズ12作目。座頭市に対しては期待が高い分だけ辛口になってしまうんだけど、本作についても大傑作である1作目を意識させる作りであるため余計に物足りなく感じられる部分も。並行して進められる3つの物語を90分弱に落とし込むのは流石にちょっと厳しくって、それより軸となる浪人との関係性をもっと掘り下げて欲しかった。よってクライマックスの殺陣も、キレはあるんだけど些か淡白に感じられてしまう。十文字の存在感も平手造酒の凄味と殺気には及ばず。成田三樹夫のニヒルなムードとルックスは雰囲気充分なだけに惜しい。善は急げ、悪も急げ。

今回のヒロイン、お種の岩崎加根子(一発変換!)は凄くイイ。他の作品に登場する妙齢の美人女優とは違った生活感&熟女感があるので市への告白にも色気とリアリティがある。市にはロマンチックな恋愛よりこっちの方がずっと似合うと思うなあ。自分は市と子供を絡める感傷的な演出は好みじゃないんだけど、今回の子役は芝居が抜群に上手いなとぁ感心していたら、なんと幼い頃の藤山直美であった。凄ぇなあ。そのほか登場するキャラは下っ端までそれぞれに魅力があって、色々出てくる割に全体がそれほど取っ散らかっていないのは見事。ハイライトは市が薬箱を失くしてしまって必死に探し回るシーンか。さすが三隈監督。
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