だいき

レッドタートル ある島の物語のだいきのレビュー・感想・評価

2.9
大人のジブリ。

スタジオジブリ作品22作目。
本作は日本、フランス、ベルギーの3か国による合作映画で、スタジオジブリにとっては初めて国外との共同製作。
構想に10年、制作に8年かけ、気が遠くなるような準備期間を経て、完成にこぎつけたものの、いざ公開してみれば観客動員数ランク外という大爆死。
まず、本編には人物のセリフがなく、映像と音楽のみで物語が進行していく。
従来のジブリ作品と比べ、難解とまではいかないものの、ファミリー向けではないことは確か。
80分の長編で無声映画はかなり退屈だという意見も多数あった。

映画祭では賞を取り、映画通からスタンディングオベーションで喝采された様だが、中身は大衆娯楽作品ではなく、どちらかというとアートや芸術の香りがする路線。
セリフを発さない分、アニメーションの細かい動きや表情、画面の風景、劇伴音楽から何が起こっているかを読み取る必要があり、想像して自分で補完する楽しさは新鮮。
また、画面はジブリや日本のアニメでの綺麗さとはまた違う写実性や装飾性にすぐれた表現が個性的で面白い。
月夜の明かりや、自然を丁寧に描き出した背景、動物たちのコミカルな動きは、無声映画だからこそ際立っていた。

言葉がないから国を超えることができるし、寧ろこういったアニメは娯楽としてアニメが発展した日本よりも、芸術として表現形式の一つとして受け入れる余地の大きい海外の方が受けるかもしれない。
その意味ではファンタジー性も含めて、時代、国境を超えた作品になった。
日本アニメ界に於いて宮崎駿の存在は大きすぎて、もう呪いと言ってもいい存在だが、その呪いに一番縛られているのがスタジオジブリ。
一本あるストーリーは誰にでも伝わりやすいが、この解釈自体は多種多様で、観客の感性に委ねる作品。
評価するのも、語るのも難しい映画である。
だいき

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