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レッドタートル ある島の物語のmanacのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

初めから「?」と思いながら見続け、最後まで「?」のまま終わった。
観終わったとき、登場人物と同じ目が点になったような顔になっていたと思う。
訳が分からない。

訳が分からないので、勝手に考察してみる。

【Q1】なぜ海亀は筏を壊し続けたのか?
A1-1:恋をした
A1-2:妖怪

これはさほど難しくはない。大体次の2パターンになるでしょう。これ以外の奇抜な解釈は凡人の私にはできない。

(1)亀は男に恋をした
人魚姫が王子に恋をしたように、亀も男に恋をした。
人魚姫は王子を助け、自分が足を手に入れることにより王子に近づいた。
しかし、人間になったところで人間界に戻ってしまえば相手に近づくことは困難である。
男がどういう生活を営んでいるかもわからないし、うまくストーキングできたところで実は男にはすでに妻子がいて幸せな家庭に戻るだけかもしれない。
となると、無人島に閉じ込め二人きりになる方が成就する可能性は高いかもしれない。
人魚姫というより、『ミザリー』に近い心境ではある。怖い。

(2)亀は妖怪だった
亀が人間の女になったところから、とりあえず普通の亀ではない。
普通の亀との番いにはなれない。人間の男が必要だった。
妖怪は人間界では暮らせない。飛んで火にいる夏の虫になった男を逃すわけないはいかない。


【Q2】なぜ男は無人島で生きる道を選んだのか?
A2:ストックホルム症候群

これはかなり難解である。
男自身の中にも複雑な葛藤があったのかもしれない。

筏を壊され殴り殺す程の憎しみを亀に抱くのは理解できる。
しかし、そこからその亀が人間の女になったところで共に人生を歩む気になるだろうか。
筏を壊し続けてた憎い相手である。
亀が人間の女になったことを見てどうやっても脱出できないと悟り、亀の元に留まる決心をしたか。
または、既に精神的に限界を迎えており、目の前に現れた女に現実逃避したか。
いずれにしろ、諦めである。
女に出会ってすぐに筏を作るのを辞めたあたり、徐々に女に情愛を覚えたなどではないことが伺える。プッツンしちゃったのかもしれない。
絶望から身を守る自己保身の手段である。ストックホルム症候群に近い状態なのかもしれない。

実際のところ、無人島で独りぼっちになったらどうなんでしょうね。2000年『キャスト・アウェイ』では、トム・ハンクス演じるチャックがボールに顔を描き相棒としていた。人は一人では生きられないのでしょうか。
どんな相手でも目の前に現れたら受け入れてしまうのでしょうか。


【Q3】息子はどうなったのか?
A3:母親と同じ人生を歩む

これも答えは簡単。
息子は言葉も持たず、社会的な生活の経験もない。
人間界に辿り着けたところで、狼少女になることは必然。
しかも狼少女は育てられた環境が狼であって、血筋は列記とした人間。
それでも難しかったのだから、亀人間の息子が人間社会で暮らせることはないでしょう。
息子は亀の血を引いている訳なのだから、母親と同じように遭難した人間を見つけ、亀人間として命を繋いでいくのだ。
人間社会では暮らせなくとも、サバイバル条件で生き抜く術は心得ている。
バッチリです。


【Q4】亀はどうなったのか?
A4:映画の冒頭に戻る

男が死ぬと女はまた亀に戻る。
これで亀が悪い魔法にかけられて亀になったお姫様ではないことが分かる。
殴り殺されて人間の姿になるところまでは童話『カエルの王子様』のようであるが(原作グリム童話ではキスではなく、お姫様に床に叩きつけられたことにより人間の姿に戻る)、女はまた亀に戻っている。
亀が本当の姿なのである。たぶん。
自分で自在に変化できるのか、番がいなくなったら戻るのか、変化のタイミングはともかく、とにかく人間の姿でいられるのは特定の条件下だけなのだ。
亀は万年生きるという。ましてや亀は妖怪である。人間よりも遥かに寿命が長いはず。
亀はまた番を求めて海を流離っているのだ。
恋する相手を見つけるのか、そんな感情はなくひたすら獲物を探すのかは分かりません。
亀の心情としては「獲物=恋」なのかもしれません。





訳が分からない映画だったけれど、意外に嫌いではない。
何も考えずにぼんやり見てるとなんだかもう一度見たくなる映画。
一度見ても「?」と思ったら、次は何も考えずにもう一度見てみると「なんだかわかんないけど、いいよな」って思えてくるかもしれません。
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