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函館珈琲の小のレビュー・感想・評価

函館珈琲(2016年製作の映画)
3.1
<オトナだからこそ抱く、もどかしい孤独がある。時にはほろ苦く、甘酸っぱい、まるで珈琲のような映画が函館から誕生しました>。公式HPのこの言葉がうまく表現しているのではないかと。わからなくはないけど、若い人向けで、オジサンには不向きだったかな。

夢を追いかける若い職人や芸術家たちがアトリエ兼住居として生活する、函館の「翡翠館」が舞台。入居資格は、オーナーの荻原時子が気に入るかどうか。

装飾ガラス職人の堀池一子、テディベア作家の相澤幸太郎、ピンホールカメラ専門写真家の藤村佐和と、ちょっと良さげな職業の3人が住んでいたけど、夏のある日、翡翠館に来るはずだった家具職人の藪下に代わり、古本屋を開くという後輩の桧山英二がやってくる。とりあえず1カ月間、様子を見て貸すかどうか決めるという時子の条件付きで、桧山の「翡翠館」での生活が始まる。

<それぞれが『人生に欠かせないもの』を探し求め、もどかしい孤独の中にいた>人たちが桧山の淹れるコーヒーの<人の心に届く柔らかい香り>に誘われるように、<束の間のふれあいがはじまる>。

桧山の古本屋は、世を忍ぶ仮の姿。本当にやりたいことは他にある。でも、それができずに立ち止まり、動けずにいる。そんな桧山は佐和に背中を押され、動き出すことを決意する。函館に来てから1カ月、時子に決意を打ち明けると…。

コーヒーを飲みながら物憂げに思いにふける桧山はイケメンだから、劇中の女性たちは放っておかない。長い人生、立ち止まった時、再び動き出す原動力となるのは自分以外の誰かの言葉や存在。

そして誰かとの関係を取り持つのは、美味しく、香り高いコーヒー。ちょっとクールで、オシャレな雰囲気の映画。

悩む暇もなく、1日に何杯もコーヒーをがぶ飲みするオジサンと対極の世界観。同じコーヒーのはずなのに、全く別のものを飲んでいるみたい。

カフェの街といえば、東京では「清澄白河」だけど、そこは函館港イルミナシオン映画祭の2013年度シナリオ大賞函館市長賞受賞作。しっかり函館しています。この映画を観て、函館でコーヒーを飲みたくなった若い女性がいる、かな?
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