燕鷲

KUBO/クボ 二本の弦の秘密の燕鷲のレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
4.0
極東のちっぽけな島国の伝統文化、民間伝承に対する愛とリスペクトが画面いっぱいに詰め込まれている。
竹取物語や富嶽三十六景、相馬の古内裏、小泉八雲『怪談』まで、お馴染みのモチーフを存分に(ある意味で過剰に)取り込みながら、その上で一級品の冒険活劇に仕上げてくれているのが驚異的。
至極単純な感想になってしまうが、海外からこんなラブレターを贈られて嬉しくないわけがない。俺は泣いたよ。

力業が過ぎる風呂敷の畳み方は明らかな難点であり、例のラスボスの処遇に関して不満が出てくるのも当然だろう。
しかし。しかし、だ。
某キャラクターの機転の利いた言動には「そうか、冒頭の何気ないセリフはドラマを締め括るための伏線だったのか」と素直に感心させられたし、あえて“物語ること”の重要性を強調することで“民話の数々を下敷きにしている意味”を浮かび上がらせるというニクい作劇に好感を持たずにはいられなかった。自分はあの結末を是としたい。

それに、エンドロールの献辞がまた泣かせてくれるじゃないか。



最後にもう一つだけ。
ところどころでおかしなニッポンの描写が顔を出したりするけれども、それでもこの映画には「舞台となる国のことを正しく描く」という誠実な態度が貫かれていたと思う。
たとえ枝葉の部分に誤りがあったとしても、異国の風習や祭事、死生観に至るまで、相当な調査と研究を重ねたことは確かだ。製作陣の努力は評価に値する。こういった姿勢を他の映画にも見習ってもらいたい。
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