ちぢみりゃんまち

ホームレス ニューヨークと寝た男のちぢみりゃんまちのレビュー・感想・評価

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ニューヨークでストリートフォトグラファーをしている元モデルのホームレスの話。
予告でこの映画を観た時は、この主人公の人物像を想像するには難くなかったが、実際本作を観ると一言で説明できない複雑性があった。

この人の人格に何かが足りない、過去のここをこうすべだったという批判は当てにならない。彼は一種のアーティストであり、評価すべきは作品のみだからである。

彼の自嘲的な笑みの裏返しには、自分の芯となるプライド(=作品)の説明だけはしないという意志の現れがあるのかもしれない。
あるいは美しさという虚像を追い求めて戻れなくなった52歳のピエロへの自嘲かもしれない。
それらが幾重にも重ね合わさって、混沌としたニューヨークの街のおかしさが浮かび上がってきた気がする。

彼が最後に言ったのは要するに「同情するなら金をくれ」である。彼はこの映画のせいで、寄生先を追われて実家に戻ったようだが、今後彼が美学の犠牲になるのか美学の体現者になるのか、最も気になるところである。