一人旅

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
マイク・ファン・ディム監督作。

安楽死を望む大富豪の青年の心境の変化を描いたコメディ。

『キャラクター/孤独な人の肖像』(96)でアカデミー外国語映画賞を受賞したオランダの鬼才:マイク・ファン・ディム監督による寓話的な社会派ラブコメディの良作で、『キャラクター』に出演したヤン・デクレールが老執事役で久々に顔を見せています。

大富豪の青年が空虚な人生に終止符を打つべく、安楽死を代行してくれる非合法の会社と自分自身を殺してもらう契約を結ぶが、主人公と同じく安楽死を望んでいるヒロインと出逢ったことで主人公の心境に変化が訪れていき―という物語で、自分がいつ死ぬか(殺されるか)分からない状況下における主人公の心変わりと契約キャンセル不可の発覚による必死の逃避行と窮地脱出のための奇策、そして紅一点のヒロインとの恋愛の行方をコミカルに描いていきます。

安楽死(尊厳死)が法的に認められているオランダやベルギーの実情を背景にしたコメディ映画で、シリアスな題材ながらコミカルな作風が小気味いい人生賛歌となっています。空虚な人生に辟易し、以前から死を望み続けてきた大富豪の主人公が、あるとき偶然出逢ったヒロインとの関わりの中で人生(生きること)の意義を見出していく―ポジティブシンキングな作劇となっていて、辛い人生の中で花開く異性への愛情が、死への執着を吹き飛ばして一転、生への執着を主人公にもたらしていきます。

生きる歓び、愛する歓びに満ち溢れた社会派人生賛歌で、『海を飛ぶ夢』(04)とは真逆のアプローチで安楽死を巡る人間模様を取り扱った良作であります。
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