ベビーパウダー山崎

Another XX ダブルエックス 赤い殺人者のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
黒沢直輔の映画監督としての旅もここが終点なのか。日陰でしか生きられない者たちが底の底から叫び続ける『絶頂姉妹 堕ちる』や世界から離れていくハードボイルドな孤独さを力強く映した『女がいちばん似合う職業』など、アンダーグラウンドな物語を抜群にキメて撮りきれる才能がありながら、結局は誰も見ないエロVシネに流れ着きブツリと切れたようにこの地で歩みを止めてしまう。
もっとこうなにかなかったのか、黒沢直輔を活かせる、唐突な暴力や暗い人間ドラマを撮らせる日本映画の企画が。寂しいし残念としか言いようがないが、ヤりきった表現、古びない逞しさに唖然とするほど特異な映画は幾つか残しているので俺たちが責任を持って語り継いでいくしかない。
テーブルに並べた「マーダー・ケースブック」に切り取った乳房を供える分かりやすい異常さ(サイコ感)は90年代悪趣味サブカルの流れ弾。終盤のプールサイドでのアクションがベスト。銃で撃たれ、ダウンジャケットの羽毛が飛び散り、揉み合いながらプールに落ちるまで。大高洋夫は第三舞台からの嫌な多重人格芝居、過剰な演劇臭は映画を安くする。シナリオは『日活ロマンポルノ外伝 昼下りの青春』でおなじみの山田耕大。所詮は企画の人、シナリオはたいしたことない。