ブタブタ

PLAYBACK~アレクセイ・ゲルマンの惑星のブタブタのレビュー・感想・評価

1.5
このドキュメンタリーはDVDのオマケ以上の価値は無く『神々のたそがれ』が圧倒的に凄く本編を見ればいいのであって当然ですが新しい発見や驚く事は特にありません。
なので『神々のたそがれ』の感想の追加を書かせてください(๑´∀`๑)
ストルガツキー兄弟の原作小説『神様はつらい』をハヤカワSF文庫で出すべきタイミングは今しかないと思うのですが。
幻のW・ギブスン脚本版『エイリアン3』はウェイランド湯谷社を始めとする資本主義巨大企業群と共産主義社会にどうやら未来の地球は二分されていて、アメリカを駆逐し追い払ったベトナムが共産主義陣営の宗主国とも言うべき位置に有るらしくベトナム人が資本主義陣営のアメリカ人と相対する存在として登場するのですが、この共産主義の理想が実現したユートピア社会は東欧のSF小説によく登場する題材で原作『神様はつらい』及び映画『神々のたそがれ』の世界観も共産主義ユートピアの遠未来の地球から文明が中世レベルの惑星に学者ら調査団が送り込まれる物の傍観するしか無いと言うお話です。
Amazonレビューでフランスの版画家ジャック・カロの欧州30年戦争を描いた版画シリーズがこの作品の元ネタとして使われているとの記述を見て西洋美術館で開催されたジャック・カロ展の図録を購入した所、正に果物みたいに吊り下げられる大量の絞首刑の図等そっくりな絵が多数ありました。
他にもカロの版画で城の広庭で行われる兵・騎士達の剣・槍・マスケット銃の演習を描いた作品で騎士達がドラゴンや水龍と言った架空の怪物を模した山車に乗って入場するのですが実物の山車にはある筈の車輪が版画では描かれず、あたかも本物の怪物に乗って騎士達が入場して来る様な不思議な絵になっています。
神々のたそがれも映画として作られているのは中世の世界そのものであるに関わらず地球から遠く離れた別の惑星と言う設定によってこの世ならざる不思議な作品となっています。
映画では数秒画面を通り過ぎる装甲車だけが地球のテクノロジーの物体で異彩を放ち強烈な印象を残しますが原作ではヘリや飛行船、催眠爆弾等他にもこうした地球のテクノロジーの産物が登場するらしいのでワンシーンだけだった、この中世と未来が交錯する場面がもう少し見たかったなと思いました。
政治的混乱にある軍事的経済的に重要な惑星に他の惑星から人間が送り込まれると言う話としてはフランク・ハーバードの『Dune』がありますが宇宙のアフガンである惑星アラキスが産出地である不老長寿の麻薬メランジを巡る紛争・陰謀を描き『神々のたそがれ』は政変により知識層の虐殺と文化の破壊、かつての中国に於ける文化大革命や現在ISにより行われている侵略や文化遺産の破壊そのままの世界が展開していて、現実でもアメリカ始め有志連合(ISが言う所の十字軍)が介入しても一向に混乱と紛争は沈静化しないのと同じくドン・ルマータ始め地球からの調査団はアルカナル王国の混乱・虐殺に対して初めから介入する事は無駄だと判断しているのか諦観と傍観するしか無い観察者であり、あらゆる出来事は目の前を通り過ぎて行くだけ、混沌と混乱の地獄巡りを楽しむと言った様相の今迄にない世界そのものを描くタイプの作品です。
わらわらとゾンビの如く現れる灰色隊やそれをあっけなく滅ぼしてしまう神聖軍団(黒騎士団)
それらもドラマティックな描写ではなく簡単なナレーションで説明されるだけで何が起きているのかはさっぱり分からない。
登場する衣装・甲冑も中世時代そのままではなく独自の物でその物量も凄まじくルマータが装着するミノタウロスの様な甲冑のデザイン。
同じく観察者の1人であるパーシカの纏う日本の鎧武者の様なデザイン等々。
それと通り過ぎて行く人達がカメラ目線なのもこの作品はカメラを持った人物がその場に居るPOV作品でもある(?)事もあって異様な臨場感あふれる映像になっています。
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