ひげしゃちょー

海よりもまだ深くのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.3
「なりたかった大人になれてるか」というシンプルかつ深いテーマを軸に是枝監督らしいささいな人間ドラマが描かれている。 台風24号がきて別れた夫の母親が住む団地に泊まることになった一日とその前日弾を、大きな事件もなく半径数メートルのこじんまりとした世界の日常の一コマとして描写している。 ドラマチックではなく本当にささいな出来事を描写しているにも関わらず心理を突いた名言が台詞が溢れている。 数ある中でも祖母役の樹木希林がメモしていいわよと茶化す「幸せってのはね、何かを諦めないと手にできないもんなのよ。」というのが胸に響いた。樹木希林だからこそ言える台詞だ。 それとリリー・フランキーがいう「誰かの過去になる勇気を持て」という台詞。 キャスト面から見てもゼロ年代を代表する傑作『歩いても 歩いても』の姉妹作のように感じたので亡くなった父親は原田芳雄だと脳内補完して観ていた。 ホームランではなくフォアボールが好きでどこか大人びた子役の子がとてもよかった。『ゴーイングマイホーム』の蒔田彩珠ちゃんがフィギュアを始める姪っ子としてちょこっと出てた。 劇中で良多がメモしていた台詞で気になっていたのを確認するためにもDVDがリリースされたら『歩いても 歩いても』と通しでまた観たい。